本研究は、日本人学習者の多文化対話活動における相互行為と語用論的能力の発達過程を解明する事を目標とし研究を進めてきた。平成24年度は(1)23年度に収集した録画会話データの書起し、(2)会話分析を使用しての分析、および(3)経過・成果発表を中心に進めてきた。 (1)に関しては、約40時間のデータの書起しを完成させコーパスを作成した。これらはWebコーパス公開の予定にある。 (2)に関しては研究協力者の協力およびデータセッションなどを通して詳細な分析を行ってきた。その結果、研究成果として大きく3つの事を明らかにすることができた。①まず、多文化環境が及ぼす英語能力への影響を考察した結果、英語能力向上には授業外における多文化対話活動を「言語学習機会」として能動的に取り組むことが必要であることが分かった。インタビューでは同様に学習意欲を見せていても、実際の会話中においては異なる行動が観察され、会話を「学習機会」と捉え取り組む学習者とそうでない学習者にわかれた。そしてその行動と総合的英語力の伸びの関連がみられた。これは実際の会話を収集・分析する意義を示しているといえる。②また、「依頼」などの発話行為に関しては、同級生同士の会話が殆どであったため使用の変化がみられなかったが、語用論的言語使用の一種と言えるword search sequenceのタイプの変化がみられた。縦断的分析より、会話相手が探している言葉を提供するother-repairからよりネイティブスピーカーのパターンに近い、自ら修正するself-repairへの変化がみられた。③さらに、対話活動の会話分析を通して、英単語や他国の文化などに対する学習・理解がみられたのみでなく、「英語学習者」から「英語使用者」としてのアイデンティティへの変化・向上がみられた。 (3)そしてこれらの成果は国際学会にて発表し、論文発表を行った。
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