研究最終年度である平成25年度においては、リスニングテストにおける問題内要因として、音声言語処理上の困難点とされる処理速度を基に「ポーズ」ならびに「スピード」を設定し、高専生の聴解能力とそれぞれの要因との関係を明らかとするために調査を実施した。本報告書では、発表済みの「スヒード」に関する結果に言及する。 放送される問題の再生スピードに関して、NTTアドバンストテクノロジ株式会社製の音声変換ソフトウェア『音声工房』を用いて、声の高さを変えずに話すスピードだけを0.8倍速に変更した版を作成することとした。 調査方法は以下の通りである。『TOEICテスト新公式問題集』において用いられている問題を2セット選び、それぞれ1.0倍速版と0.8倍速版を作成した。TOEICテストのリスニングスコアから、調査参加者611名を上位群と下位群に分け、さらにそれぞれを2つのグループに分割した。したがって、問題2種類*再生スピード2種類*聴解能力2群の8グループを作成し、問題セットに発生する受験順序効果等を抑制した。 調査結果として、まず1)再生速度を遅くすることは、写真描写問題に対する高専生の聴解を促進する効果が確認されたが、その効果は小さいことが明らかとなった。次に、2)能力別に見ると、下位群に対して聴解を促進するが、その効果は小さいことが明らかとなった。そして、3)個々の問題項目を考察すると、再生速度を遅くすることによってより正解に近づく項目が1セットにつき1から2項目あり、その効果は小から中程度であることが明らかとなった。
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