本研究の目的は,句動詞の意味の有縁性に着目し,学習者が句動詞の意味を定着できるよう,認知言語学の理論に基づき,フラッシュなどの動画を使って視覚的に記憶することを促進するシステムの構築を目指したものであった。句動詞習得の意義は,自分が伝えたい内容を,平易な基本語を使って表現できる点にある。よって,学習者のコミュニケーション能力の向上に繋がると考えられる。 本研究を遂行するにあたり,初年時では,コーパス等から,学習者が触れる機会の多い句動詞を選出し(句動詞179個,スーパー・スキーマとローカル・スキーマを含んだ不変化詞48個),先行研究(cf.Rudzka-Ostyn1988;Kurtyka2001)を参照しながら説明の記述や静止画像を作成した。記述の妥当性やイラストを使った句動詞指導の有効性を検証し,その後,学会発表を通して専門家の意見等の収集を行った。3校で実施した検証の結果,統制群と実験群において,t検定では統計上有意な違いが明らかとなり,効果的な学習方法であることが認められた。 最終年度では,各学会発表を通して得た有益な示唆を基に,動画化の作業へと移行した。動画化に伴う短所,例えば注意の散乱や焦点化の場所等の問題を解決すべく,認知心理学の文献等を参照しながら,記憶と視覚との関係を明らかにし,適切な動画の提示方法を模索し,専門家との研究交流を積極的に行いながら,HTML7で制作した動画を完成させた。なお,本研究で得られた成果の一部は,中学・高校の教育現場の先生方など,約400名の会員登録のあるサイトにて,無料でダウンロードできるよう,公開しているが,さらなる成果を社会に還元できるよう,今後はこの動画を使ったアプリケーションを開発することを研究の展開として考えている。本研究の成果をまとめた論文としては,『日本認知言語学会論文集第13巻』などに掲載されているので参照されたい。
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