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2012 年度 実施状況報告書

ボトムアップ式の言語習得概念の英語教育への応用可能性に関する実証的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23720308
研究機関沼津工業高等専門学校

研究代表者

藤井 数馬  沼津工業高等専門学校, 教養科, 講師 (50413779)

キーワードボトムアップ / コア / 英語教育
研究概要

平成23年度においては、助動詞のコア図式を用いた2度の授業実践および質問紙調査から、コア図式を与えること自体は、学習者たちに好意的に受け入れられたが、空所補充式の小テストを用いた結果からは、単にコア図式を示しただけでは、意味の理解や記憶の保持に顕著な効果はもたらさず、コア図式の有効性を活かすためには、その図式が学習者にイメージとして定着させるための例文提示などが求められることが示唆された。
そこで平成24年度においては、まず、コアやイメージを用いた英語授業実践が、平成23年度に得られた実践結果の他に、どのような期待される有用性があるのか、また、どのような考慮すべき点があるのかについて、理論的および実践的側面からまとめた。具体的には、コアやイメージを使うことで、意味に明示的に迫ることで意識(awareness)の高まりを得たり理解可能なインプット(comprehensible input)につながったりする可能性があることや類似表現の使い分けに貢献すること等の有用性と、周辺的な用法に対する説明が難しいことや一つのコアの適用範囲が判然としないこと等の、教育実践上の考慮を要する点に加え、言語学的健全性と教育的健全性は完全に一致するものではなく、言語学理論に基づきながらも学習者に益する教育的に健全な教育を求めていく必要があることをまとめた。
もともとコア図式は、認知言語学の視座に基づけばボトムアップ的に立ち上がってくるものであるが、日本のEFL環境において、言語学に健全な意味でのボトムアップ式のコアのイメージ化を確保するのは難しい。そこで、教育的に健全なかたちでボトムアップ式の言語習得概念に基づくコア図式を利用した方法論を探る基礎研究として、コア図式の提示を例文説明の後でしたり、例文を先に提示して協同学習的にコアを導かせたりする教育実践を行い、その影響を調査した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究を遂行するにあたり、授業内で提示するコア図式が、意味の理解や記憶の保持において有効な働きをするのか、また学習者たちの意識はどうかを調べることが、今後の研究のための必要条件になる。現在この点に関しては、平成23年度の実践研究から、コア図式を提示する場合には、それがイメージ化して咀嚼できるように学習者に与える必要性が示唆されている。
また、平成24年度には理論的・実践的側面からコア図式を使った授業実践について、考えられる有効性と注意点をまとめ、言語学的健全性と教育的健全性を区別した。この、両健全性は必ずしも一致するものではないという基盤に立ちながら、教育的に健全なかたちでのボトムアップ式の言語習得概念に基づく、コア図式活用のかたちとしての協同学習的な学習スタイルの可能性を考えている。最終年度にあたる平成25年度では、この協同学習的なスタイルを利用して、コア図式を教育的に健全に活用するためのあり方を、実践を通して探っていく。

今後の研究の推進方策

平成23年度、24年度の研究成果に基づき、平成25年度では、教育的に健全なかたちでのボトムアップ式の言語習得概念に基づく、コア図式活用のかたちとしての協同学習的な学習スタイルの可能性を考えている。
具体的には、学習者の中で身近でイメージしやすいと考えられるin, on, at, forの4種類の前置詞を教材として用い、3~4人で1グループを組ませ、各前置詞を使った例文を先に数文与える。グループ内で、これら例文から共通して立ち上がってくる前置詞のイメージを紙に書かせ、グループ内で他の学生に説明させることで、イメージ化と定着を促す。このボトムアップ的な教育効果について、トップダウン式でコア図式を与えたグループとどう異なるか、実践を通してまとめていく。

次年度の研究費の使用計画

情報収集や研究成果の発表や他の先生方との情報交換のための学会や研究集会に参加するための旅費を中心に、成果発表のためのパソコンやプリンタ、情報収集のための書籍の購入として主に使うことを計画している。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] コア図式提示順序に関する実践報告2013

    • 著者名/発表者名
      藤井数馬
    • 雑誌名

      沼津工業高等専門学校研究報告

      巻: 第47号 ページ: 403-408

  • [雑誌論文] 詫間キャンパスにおける受験形態別に見た英語学力の変遷―B.A.C.E.およびA.C.E.の結果を通して―2013

    • 著者名/発表者名
      藤井数馬
    • 雑誌名

      全国高等専門学校英語教育学会研究論集

      巻: 第31号 ページ: 89-98

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 沼津高専本科生の英語学習実態報告2013

    • 著者名/発表者名
      藤井数馬、鈴木久博、村上真理
    • 雑誌名

      沼津工業高等専門学校研究報告

      巻: 47 ページ: 397-402

  • [雑誌論文] 詫間キャンパスにおける1年間の定期的な授業内英語多読が学生に与えた影響について2013

    • 著者名/発表者名
      藤井数馬
    • 雑誌名

      高専教育

      巻: 36 ページ: 199-204

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Oral Exam, Participation Points and a Survey of Student Learning Style Preference2012

    • 著者名/発表者名
      Kazuma Fujii and Robert Johnston
    • 雑誌名

      香川高等専門学校研究紀要

      巻: 3 ページ: 57-64

  • [雑誌論文] 米国からの高校生短期受け入れとその波及効果について2012

    • 著者名/発表者名
      森和憲、藤井数馬
    • 雑誌名

      香川高等専門学校研究紀要

      巻: 3 ページ: 65-72

  • [雑誌論文] 高専の英語教育におけるコア図式使用の可能性について2012

    • 著者名/発表者名
      藤井数馬
    • 雑誌名

      日本高専学会第18回年回講演会講演論文集

      巻: 18 ページ: 19-20

  • [学会発表] コアやイメージを用いた英語教育実践における有効点と考慮すべき点2013

    • 著者名/発表者名
      藤井数馬
    • 学会等名
      同志社ことばの会
    • 年月日
      20130000
  • [学会発表] 人事交流を有効に活用する「把握・実践・引き継ぎ」:「学習実態とニーズ調査・多読実践・記録帳作成」を具体例として2012

    • 著者名/発表者名
      藤井数馬
    • 学会等名
      平成24年度全国高専教育フォーラム
    • 発表場所
      国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都)
    • 年月日
      20120828-20120828
  • [学会発表] 高専の英語教育におけるコア図式使用の可能性について2012

    • 著者名/発表者名
      藤井数馬
    • 学会等名
      日本高専学会
    • 発表場所
      近畿大学工業高等専門学校(三重県)
    • 年月日
      20120825-20120825
  • [学会発表] 1年間の定期的な授業内英語多読が高専生に与えた影響について―情意面と外部試験の結果を中心に2012

    • 著者名/発表者名
      藤井数馬
    • 学会等名
      中部地区英語教育学会
    • 発表場所
      岐阜じゅうろくプラザ(岐阜県)
    • 年月日
      20120701-20120701

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公開日: 2014-07-24  

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