研究課題/領域番号 |
23720311
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐藤 尚平 早稲田大学, イスラーム地域研究機構, 助手 (70597939)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 脱植民地化 / イギリス帝国 / ペルシャ湾 / アラブ首長国連邦 / カタール / バーレーン |
研究概要 |
【具体的内容】研究開始直後は、これまでの自分の研究成果をまとめながら、1950年代のペルシャ湾保護国におけるアラブ・ナショナリズムの高揚とそれに対するイギリス及びペルシャ湾保護国の首長らの対応策をその初期段階から把握することに注力した。この局面では、すでにバーレーン王立歴史研所で得た首長文書群や、英国国立公文書館で収集したイギリスの政府文書の分析が主な作業となった。 次に、UAE国立公文書館に未整理のまま所蔵されているペルシャ湾保護国関連文書群等の調査を開始した。おもにアラビア語で記されているこの文書群は、文書館内に未整理のまま放置されておりこれまでほとんど存在すら知られていなかったが、「カスル・アル・ホスヌ(王宮)文書」など一般に公開されていない文書にも特別な許可を取り閲覧することが出来た。さらに、ジョージダウン大学カタール分校において各専門家と研究交流を行った。【意義】本研究は、全体としては、ペルシャ湾保護国とイギリス帝国との関係性の変容に注目して、1956年のスエズ戦争から1971年の三国誕生に至るまでのペルシャ湾南岸の国際関係の全容を明らかにすることを目指している。3年間の研究計画のうち、初年度は1950年代の初期状況を把握することが目標であり、上の通りこの目標を達成することが出来た。【重要性】本研究は、脱植民地化期のペルシャ湾南岸とイギリス帝国の関係の研究であり、初年度の成果は、1971年に誕生したアラブ首長国連邦(UAE)、カタール、バーレーンの成立過程を、イギリス帝国の解体と脱植民地化という世界史的な動態から読み直すという大目標に着実につながるものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書には、次の通り記載した。「まずは、これまでの自分の研究成果をまとめながら、20世紀半ばのペルシャ湾保護国におけるアラブ・ナショナリズムの高揚とそれに対するイギリス及びペルシャ湾保護国の首長らの対応策をその初期段階から把握する。初期段階でのペルシャ湾保護国における内政と外政の関係性を把握した上で、その後の展開を通時的に整理し、ペルシャ湾保護国が最終的に独立する際にもイギリスに頼らざるを得なかった状況の成立背景を明らかにしたい。この段階から、すでに収集した一次資料だけでなく、フィールドワークを通じて新たな一次資料の収集、整理にも着手する。さらに、ワークショップや研究者交流などを通じて、積極的に研究成果の発表、世界各地、関連各分野の研究者との交流を進めたい。」上「研究実績の概要」に詳述した通り、これらの目標は全て達成された。さらに、研究成果の発信も積極的に行った。二つの国際学会(査読付き)で報告を行い、さらに国際会議で発表をして論文集に論文を出版し、別の査読付き国際誌にも論文を投稿た(採択決定済み、印刷中)。また、最終成果の出版の準備のため、早い段階で海外の学術出版社との交渉を開始した。Manchester University Pressに送ったプロポーザルは二人の匿名査読者から高い評価を得たので、現在、同出版社と出版計画を進めている。よって、当初の計画以上に進展しているとまとめられる。
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今後の研究の推進方策 |
前年の成果を踏まえて、イギリス帝国とペルシャ湾保護国の関係の分析を本格化させる。ここで重要なのは、ペルシャ湾保護国、それをゆるやかに含むイギリス帝国、さらにそれを包含する国際社会全体という三者が、排他的ではなく重層的な構造の中で交渉をしていたという点だ。さらに、九つの保護国が一枚岩的な存在ではなく、それぞれ個別にイギリスのペルシャ湾駐在官に対外関係を一任していたということにも注目すべきである。本研究では、個別的なペルシャ湾駐在官との関係を介し、九つの保護国同士が間接的に交渉する経路などにも着目して、それぞれの重層的な国際関係の様子を明らかにすることで新しい視角を提示したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続きフィールドワークを通じて新たな一次資料の収集、整理を進める。さらに、ワークショップや研究者交流などを通じて、積極的に研究成果の発表、世界各地、関連各分野の研究者との交流を進めたい。こうした作業を中心に必要となる諸経費に研究費をあてたい。
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