最終年度に実施した研究の成果、および研究期間全体を通じて実施した研究の成果としては、『近代日本と雪害 雪害運動にみる昭和戦前期の地域振興政策』(東北大学出版会、2013年10月)という論文集を発行したことが挙げられる。 これは、東北大学出版会若手研究者出版助成事業(第8回)で採択されたことによって刊行されたものであり、昭和初期に展開された雪害運動について検討を加えることによって、その意義や近代日本における地域振興について考察したものである。内容は、2006年に提出した博士論文の一部を再構成したものであるが、これまでに発表していなかった論考を数編含んでおり、それまでの雪害運動に関する研究水準を大幅に引き上げた。 また、この論文集をまとめるための編集作業や追加調査を実施しただけでなく、近代日本における地域振興政策の研究という課題に応えるために、各種の文献や歴史資料について、収集や整理作業を展開した。具体的には、日本新聞博物館の新聞ライブラリーや国会図書館のほか、地元にある宮城県公文書館のような施設に足を運び、昭和戦前期の地域振興に関する活動についての調査を実施した。 そのほか、2011年の東日本大震災を契機として、災害の歴史に関する問題関心が高まったことを受けて、1933年の昭和三陸津波、1934年の東北大凶作、1936年の豪雪などについて、地域振興の視点から検討を加えた。1936年の豪雪については『講座 東北の歴史』第4巻(清文堂、2012年9月)に「雪害運動と雪害の認知 一九三六年豪雪と雪害対策」を発表した。また、昭和三陸津波については、2013年10月に東北大学で開催された東北史学会において「昭和三陸津波と軍隊」を発表したほか、『東北大学史料館紀要』第9号(2014年3月)に「昭和三陸津波と東北帝国大学」を発表した。
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