本研究の目的は、明治期後半(1880~1910年代)以後の日本人の「南方」島嶼(小笠原諸島、ミクロネシア、北西ハワイ諸島、台湾周辺の小島嶼など)への進出と関与の実態を、主として公文書および新聞・雑誌記事などの同時代史料により明らかにすることである。 最終年度にあたる2012年度においては、(1) 国立国会図書館、東京都公文書館等の関連資料を有する機関において実地調査を行い、日本人の小笠原・沖縄周辺の小島嶼開拓についての関連史料の収集を実施した。特に、明治期から昭和初期にかけての雑誌に掲載された文献についての収集を進めた。 (2) さらに、その歴史学的分析をもとに研究成果をとりまとめ、研究成果報告書として発表した。 こうした一連の調査および論考によって、日本人による小笠原・沖縄周辺の小島嶼開拓と、無主地先占論に基づく小島嶼(大東諸島、火山列島、尖閣諸島、南鳥島、竹島、中ノ鳥島、沖ノ鳥島、等)の日本領編入についての通史的整理を行い、特に、これらの島々の開拓は、基本的にはいずれもリン鉱石やアホウドリなどの資源獲得を目的とした投機的事業に基づくものであり、それが実在の島嶼のみならず、存否の不確実な島嶼(グランパス島、イキマ島など)の探索や、果ては実在しない島嶼(中ノ鳥島)の「領土編入」(1908年)という事態すら引き起こすに至ったこと、また、領有権を確定した日本政府の側も、領土編入が将来的にもたらす結果について十分に検討していなかったこと等を指摘した。 こうした成果を前提として、近代以降の日本人の領土・国土認識の実態について明らかにすることが、次の課題となる。
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