研究課題/領域番号 |
23720321
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
板垣 貴志 神戸大学, 人文学研究科, 特命助教 (80588385)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 家畜預託慣行 / 家畜小作 / 有畜農業 / 農山漁村経済更生運動 / 畜産業 / 歴史学 / 農業史 / 牛 |
研究概要 |
今年度は、分散的になっている畜産史を再構築するために畜産史に関する基本的資料の網羅的な収集と分析をすすめた。具体的には、農業災害補償制度、家畜保険法、農業動産信用法の法制度整備過程および実施後の経過に関する資料群を中心に収集した。その結果、昭和農業恐慌対応に始まった1930年代の日本農政の転換において、重要課題として畜産業に着目が集まり、国家的課題となっていく過程の見通しをたてることができた。とりわけ1931年に施行された有畜農業奨励規則は、従来の政府のとった畜産奨励方針が、個体の改良と増産に重点をおいていたのを反省して、畜産と農業経営との有機的な結びつきを図ろうとしたところに、重大な意義をもっていた。そして、当該期に展開した農山漁村経済更生運動の有効な具体策として、全国的に取り組まれていた実態の一端を把握できた。この成果は、従来の一部の農山漁村経済更生運動研究が指摘していたように、一見すると自給主義(自給肥料の増産、自給味噌、醤油など)をはかりながら、全体としては商品経済化の促進を結果するもの(二毛作奨励、共同作業奨励、有畜農業、園芸作物の導入、増産など)であり、当面焦眉の課題に答えながら、農政の転換、農村構造の変化の線を進めていたことに注意を払う必要があるとする評価を裏付けるものである。つまり日本近代農業を特徴付けていた養蚕業からの転換をはかる当該期の日本農政および農村にとって、「有畜農業」の指導と奨励は、歴史的に大きな意味をもっていたことを解明しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現状では、交付申請書に記した「研究が当初計画どおりに進まない時の対応」となっている。当初分析予定としていた家畜多頭所有者の史料群(高木家文書および中村家文書)が計画通り進まず、畜産史関係資料の網羅的に収集に研究をシフトさせている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に進めていた方向で研究を進めていきたい。つまり分散的になっている畜産史の学説史を整理し、再構築することを目的としている。先ず具体的には、1930年代以降に展開する有畜農業奨励政策の歴史的性格を明らかにする作業を進めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
畜産史関連資料の収集を進める。西井俊蔵『農業機械文献目録』(1943年)、農林省振興局研究部『畜力利用に関する文献目録』(1952年)などの文献目録を参照しつつ、当該時期に畜産業研究を行った代表的な農業経済学者の蔵書や資料の調査を進めていく。
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