研究課題/領域番号 |
23720322
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
福留 真紀 長崎大学, 教育学部, 准教授 (60549517)
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キーワード | 日本史 / 近世 / 徳川幕府 / 将軍側近 / 柳沢吉保 / 田沼意次 / 水野忠友 |
研究概要 |
平成24年度は、将軍側近から見た徳川幕府の政治構造について、江戸時代中期・後期について成果をあげることができたと考えている。 中期については、昨年度刊行した『将軍側近 柳沢吉保 ―いかにして悪名は作られたか』(新潮社)の成果をもとに、今年度の研究成果を含めた内容を一般に紹介する機会を得ることができた。いずれも招待講演で、財団法人郡山城史跡・柳沢文庫保存会主催の歴史講座で「将軍側近 柳沢吉保」を、赤穂義士会主催の講演会で「赤穂事件と柳沢吉保」を行った。 また、かねさは歴史の会では、招待講演「室鳩巣の見た八代将軍吉宗」を行った。この講演の内容を含め、室鳩巣が幕府の儒学者を務めた6代将軍家宣から8代吉宗政権期の将軍側近をめぐる幕府政治構造についての、書籍の執筆を進め、25年度に刊行予定である。 後期については、前年度に引き続き、田沼時代を中心に研究を進めた。名古屋市蓬左文庫と名古屋大学で、田沼意次と交代寄合高木家に関連する史料調査を行い、その成果を幕藩研究会で「田沼意次 側用人・老中兼任の実態 ―美濃衆高木貞歳の家督相続をめぐって」、岡山藩研究会で「田沼意次邸の「中御勝手通」 ―美濃衆東高木家の事例から―」と題して、研究報告を行った。また、田沼意次と同時代に活躍し、老中と奥向の御用を兼任した水野忠友にも注目し、早稲田大学図書館所蔵の「水野家記録」の分析を進めた。その成果は、幕藩研究会大会において「田沼時代の将軍側近 ―水野忠友研究序説―」と題して報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、当初、交付申請書に記した予定では、前年度と同じ調査地において、江戸時代後期を中心に史料調査を行い、分析を進めること、幕藩研究会で研究報告をすること、としていた。 そのうち、姫路市立城郭研究室(兵庫県)・彦根城博物館(滋賀県)・島原図書館(長崎県)については、実際に足を運ぶのではなく、これまでの調査で収集した史料を分析した。そのほかの調査地については、名古屋市蓬左文庫、名古屋大学、早稲田大学図書館に調査に行き、所蔵されている田沼意次・水野忠友といった将軍側近や、それに関連する交代寄合東高木家の史料の分析を進めることができた。ほかに、東京大学史料編纂所でも、水野家関係の物ものをはじめとする幕府関係史料の調査を行った。以上のことから、当初の目的を達成できたと考えている。これらの調査から得られた研究成果は、幕藩研究会・岡山藩研究会および幕藩研究会大会において報告することができた。 加えて、江戸時代後期だけでなく、中期の側近についても、昨年度までの研究をより深化させて、講演を行うなど、一般社会にも研究成果を公表する機会を得ることができた。 初年度に引き続き、江戸時代後期だけでなく、中期との関係を含めた実績を上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後とも、当初の研究の推進方策を大きく変えることはしない。 平成25年度以降も、24年度と同じく、9代徳川家重以降の時期の将軍側近を中心に、調査・分析・研究を進める。 主なものとしては、本研究の中心的な分析対象である東京大学史料編纂所所蔵の「水野忠友日記」「水野忠成日記」の調査・分析を実施する。加えて、首都大学東京図書情報センター所蔵の水野家文書「老中借写日記」の調査を行い、「水野忠友日記」「水野忠成日記」との比較をすることにより、老中と将軍側近との関係の分析を進める。また、これまでと同様に、該当時期の幕府情勢の分析のため、名古屋市蓬左文庫(愛知県)、独立行政法人国立公文書館(東京都)、明治大学博物館(東京都)、東京国立博物館(東京都)などに所蔵されている、江戸幕府日記の調査を行う。 加えて、これまで通り、幕府藩研究会・岡山藩研究会全体会などの学会・研究会報告、将軍側近をテーマとする書籍・論文の執筆だけでなく、市民向け講演会など、一般社会への研究成果の公開を積極的に行っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費が発生したのは、24年度の研究の実施の際に、当初の計画からの細部の変更があったためである。具体的には、姫路市立城郭研究室(兵庫県)・彦根城博物館(滋賀県)・島原市立図書館(長崎県)の史料調査を予定していたが、実際に足を運ぶ機会を作ることができなかったため、前年度までの調査で収集した史料を分析したことや、他の史料保存機関への出張が、予定回数よりも少なくなってしまったことがある。そのような、史料調査先の変更や、それにともなう史料の調査方法の違いになどによって、必要となる物品が変わってきたことも原因としてあげられる。 ただし本研究は、当初の方針で、限られた時間の中で、多数の幕府関係、大名家の史料調査を行わなければならないことから、最初の計画通りに史料調査が実施できなかった場合には、臨機応変に対応することを掲げている。よって、今回の変更も、前年度の時と同様に、想定の範囲内のことである。 平成25年度は、特に、首都大学東京図書情報センターに所蔵されている水野家文書のうち「老中借写日記」の調査を、複数回実施する予定である。この史料は、所蔵機関により、マイクロ複写のみと定められているために、研究に必要な史料をすべて複写すると多額の費用が必要になる。その部分を、繰り越し分で賄うことになると考えられる。そのほかについては、独立行政法人国立公文書館、明治大学博物館、東京大学史料編纂所での史料調査、および各種研究会報告のための東京出張といった、当初の研究計画に従って実施することで、予定している研究費が使用できると考える。
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