研究課題/領域番号 |
23720324
|
研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
松尾 晋一 長崎県立大学, 国際情報学部, 准教授 (40453237)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 異国船 / ロシア / 情報 / 蝦夷 / 幕府対外政策 / 長崎 / 寛政 / 境界領域社会 |
研究概要 |
本年度は、ロシア問題に関して境界権力が行った諜報活動の実態把握を目的として史料収集および分析を行った。 研究成果としては、1)大名家にとっての情報入手先は、幕府、他大名のほか、商人など幅広い階層であったことが明らかになった。2)国元では集積された情報の質が判断できず、同レベルで情報を扱う大名家が多い傾向にあることもわかった。3)国元に集積された情報が、江戸、大坂、長崎の屋敷や飛地などの出先機関へあまり流されない傾向があることが明らかになった。 また、寛政9年(1797)の釜山浦への異国船漂着、対馬近海での異国船出没に関する史料がまとまって収集できたことから分析を行い、1)実際はイギリス船であったが、情報がないなかではロシア船である可能性が高いと判断して、宗家や幕府が対応したこと。2)宗家だけで対応できない時は、松浦家と大村家に援兵を求めるように幕府が指示したこと。3)対馬海峡での状況を受けて幕府は蝦夷地への警戒を強め、松前・南部・津軽の三家に警備強化を指示したこと、などが明らかになった。これらの点については、「境界領域における「異国船」問題―寛政期の対馬海峡を事例として―」(長崎県立大学国際情報学部研究紀要)を執筆し、研究報告「寛政期における対馬宗家の有事対応と幕府対外政策」を行った(九州史学研究会近世史部会)。また『新長崎市史第二巻近世編』(分担執筆)にも成果の一部を紹介した。 なお、史料収集については、函館市中央図書館、東京大学史料編纂所、九州大学、県立対馬歴史民俗資料館、松浦史料博物館、韓国国史編纂委員会などで調査を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の研究計画に従って史料収集や分析を行ってきたが、まず史料収集については、概ね予定通り作業を進めることができた。ただ、韓国の調査を前倒して実施した結果、日本海側で早い段階から積極的に海防強化に取り組んだ松江藩や浜田藩の史料収集ができなかった。従って次年度は、まずこの調査に着手したいと考えている。分析については、予定通り作業を進めることができており、成果報告も順調なペースで行えている。
|
今後の研究の推進方策 |
ロシア問題に関して境界権力が行った諜報活動の実態把握と大名家における収集した情報の活用と政策の展開に関する分析を継続して行い、幕府対外政策の展開と境界領域社会の関係に関する分析を行っていく。具体的には、1)「津軽海峡・蝦夷地」「松江・隠岐」「対馬海峡」「長崎」の海域警戒に関係した大名家の分析を行う。2)1)の研究成果を踏まえた比較分析から境界領域としての共通性と独自性を抽出する。3)幕府対外政策の境界領域社会への影響について分析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究費使用計画ではパソコンを購入する予定であったが、購入しなかったのでその分が翌年度繰越金となった。これは本年度購入する予定である。本年度も、昨年度に引き続き研究計画に従って北海道、東京などで調査するとともに、島根調査を実施する。また、研究関連書籍の購入も昨年度同様に行い、場合によっては史料も購入したいと考えている。
|