研究課題/領域番号 |
23720324
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
松尾 晋一 長崎県立大学, 国際情報学部, 准教授 (40453237)
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キーワード | 幕府 / 異国船 / 対外政策 / ロシア / 対馬 / 朝鮮 / 長崎 |
研究概要 |
本年度は、昨年度の成果をふまえて「幕府対外政策の展開と境界領域社会」をテーマに分析を行い、寛政~文化期の関係史料を収集した。研究成果としては、1)真贋は別として対外的な危機感を日本社会に煽る情報が、対外政策に直接的な影響を及ぼしていなかったことが確認できた。検証すべき課題であるが、情報分析がどういった形であったにせよ機能していたためであろうと推測される。2)有事における対策を比較分析した結果、軍事戦略的な面だけ整備した地域もあれば、ほぼすべての住人の安全確保まで計画された事例もあり、地域によって取り組み方が違っていたことが明らかになった。これは領主の危機意識と有事対応の想定規模の違いからみられる現象と言えるが、国家的規模での有事対応策が構築されなかったところに幕藩体制の限界であったという評価もできよう。これらについては、松尾晋一『江戸幕府と国防』(講談社、2013)のなかで紹介している。なお、史料収集については、天理大学図書館、神宮文庫、県立対馬歴史民俗資料館などで調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の研究計画に従って史料収集や分析、成果の公開などを行ってきたが、まず史料収集は松江藩や浜田藩について十分にできなっかった。この点はすぐに着手したいと思う。次に分析だが予定通り作業を進めることができており、成果の公開についても順調なペースで行えている。
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今後の研究の推進方策 |
「ロシア問題に関して境界権力が行った諜報活動の実態把握」「収集した情報の活用と政策の展開(大名家を対象)」「幕府対外政策の展開と境界領域社会」といった本研究の柱になるテーマについては、史料収集・分析作業を継続して行い、研究対象時期の日本における危機管理体制再構築の時代的特質を前後の時代と比較して検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
史料調査を計画していたものの実行できなかった分が、翌年度繰越金となった。この分も含めて、史料調査を計画的に実施したいと思う。これ以外については、昨年度に引き続き研究関連書籍の購入や史料撮影など行い、適切に研究費を使用していきたいと考えている。
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