研究課題/領域番号 |
23720330
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
真辺 将之 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (80546721)
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キーワード | 大隈重信 / 政党認識 / 初期議会 / 立憲改進党 / 文明運動 / 人生一二五歳説 |
研究概要 |
本年度も、昨年度に引き続き、大隈重信関係の史料を多く収集することができた。特に、早稲田大学所蔵の史料はもちろんのこと、国立国会図書館所蔵史料や宮内庁書陵部所蔵史料の調査を行うことができたほか、都城市立図書館に出張し、上原勇作旧蔵史料を保存する上原文庫の史料のなかから、関連する史料をカメラ撮影して収集することができたのは大きい。 また、昨年度に引き続いて、大隈重信の論文・著書に関する目録、大隈重信宛書翰のデータベース、大隈重信の動向に関する年表を作成した。作成するにあたっては研究補助者の助力を得ることができた。各種新聞報道や雑誌記事などを網羅的に収集し、入力する作業を行った。入力は中途段階であるが、次年度も増補を重ねていき、入力のもととなる史料の収集と合わせて、充実させていきたい。 第三に、大隈が第二次内閣を組織する前提としての、国民的人気が奈辺から生じたのかを解明するために、大隈の文明運動と人生百二十五歳説に関する論文や、大隈の晩年の政治意識に関する論文を執筆・発表することができた。 第四に、議会開設以後の大隈重信の政党認識、とりわけ隈板内閣成立以前についての、民意に対する認識を明らかにする作業を行うことができた。特に、大隈の民党としての立場と、第二次松方内閣の与党としての立場とがいかなる意味で連続的に理解しうるのかという問題意識から、関連資料の検討を行った。今後は、隈板内閣期、さらにはそれ以後の政党指導との連続性を視野にいれながら、さらに検討を重ね、活字化して外部へ発表することを考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の震災による研究開始の遅れが本年度まで響いたほか、大隈に関連する史料が当初の想像以上に多く、そのため収集や年譜作成、さらにその分析に時間がかかることとなった。しかし拙速に研究を行うよりも、じっくりと多くの史料を元にした深い分析を行うことが必要との立場から、あえて成果を残すことに焦ることなく、一歩一歩着実な研究の進展を旨とすることとした。以上の理由による。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、研究最終年度に当たることから、研究に一定の区切りをつけるべく、全体の見通しが立つような研究の進め方をこころがけたい。特に、本年度研究途上にある議会開設後の大隈の政党指導ならびに政党認識を、、第二次大奥重信内閣成立期までの長いパースペクティブにおいて把握することを目指したい。特に初年度以来抱いている、大隈の民意と向き合う姿勢が、現実の議会政治の展開のなかでどのように変化していくのかという問題意識は持続して持ち、民党としての立場と、第二松方内閣、隈板内閣での統治の側としての立場とがどういう関係にあるのかとい うことを明らかにするとともに、その後の在野活動期における元老批判・政党批判が、民意との関係の取り結び方にどのような変化をもたらしたのかということを考えていきたい。またその考察の材料となる史料を収集するとともに、それを活用するためのツールとしての、論著目録、書翰目録、年表等のデータベースの作成を引き続きすすめ、充実させていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に、震災の影響で、研究費の執行・開始が遅れたため、研究補助者の雇用が遅くなり、その結果当初見込んだほどの史料収集を行うことが できなかったことが、平成24年度の研究状況にも響いており、本年度も、史料収集ならびにデータベース作成をより効率的に進めるために早期に研究補助者を2名雇用して、前年度までの遅れを取り戻すべく精力的な調査を進めたい。特に大隈が経営していた『郵便報知新聞』の記事を精査するとともに、国立国会図書館等に所蔵されている原史料についても複写・収集を進めたい。また東京のみならず、広く全国各地に所在する史料を集めることに留意し、そのための旅費・複写費としても研究費を使用する予定である。また幅広く近代日本史研究の関連研究書や関連史料書等を購入することによって、研究を広い視野から進めていくことに留意したいと考えている。
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