研究課題/領域番号 |
23720332
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
梶居 佳広 立命館大学, 経済学部, 講師 (60537306)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 朝鮮戦争 / 新聞論説 / 講和・安保論議 / 憲法・再軍備論議 / 東アジア認識 |
研究概要 |
本研究は、朝鮮戦争(1950-1953年)が日本の内外政策(憲法・再軍備、対日講和・安全保障など)に関する論議、日本の南北朝鮮をはじめとした東アジアへの認識に与えた影響について、日本各地の地方紙を中心とした新聞メディアの論説を整理しつつ検討することを目的としている。平成23年度は研究初年度であることから、比較的部数の多い新聞を中心論説記事の収集につとめ横浜の新聞ライブラリーや国会図書館、各県立図書館へ出張し記事収集作業を進めた。その結果『河北新報』『中部日本新聞』『中国新聞』『西日本新聞』といったブロック紙・準ブロック紙をはじめ、「一県一紙」で成立の既存地方紙の多く(『新潟日報』『熊本日日新聞』『南日本新聞』など)や東京発行紙(『東京新聞』)、さらに在日華僑が発行していた『國際新聞』も含めて論説収集を完了することができた(合計25紙)。収集した論説の整理・検討はまだ不十分であるが、以下の事実が明らかになった。1.朝鮮戦争開戦から約1年間、ならびに休戦成立前後に比較的関心が高い。2.戦争の性格については「自由世界」と「共産主義」の対立の一環ととらえられ朝鮮の内戦という理解に乏しい。3.そのため論説も米ソ、中国(中華人民共和国)、国連の動向に関心が集まっている。4.戦争勃発により講和論議については単独講和論の優位が決定的になったことは先行研究の指摘通りであった。5.再軍備・憲法問題については1950年7月の警察予備隊発足が直ちに再軍備と解しなかったものの、翌年以降(特に講和条約調印後)再軍備の是非、憲法改正問題が論じられるようになった。なお憲法論議についてはイギリス(駐日大使・新聞論説)の動向に関する研究報告・論文発表を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」でも言及したように、平成23年度は全国の地方紙(約80紙)のうち25紙の論説記事を収集完了することができた。全体の3分の1未満の収集ではあるが、ブロック紙や既存地方紙など地方紙の中でも比較的部数が多く、かつ重要と思われる新聞を重点的に収集したので、収集作業はかなり順調に進展していると考えている。論説記事の整理・検討については図表化などに着手しておらず、この点(当初の予定より)やや遅れているが、朝鮮戦争(講和・再軍備)についての各紙の関心の持ちようや議論の型、論調の特徴は「研究実績の概要」で指摘したようにかなりの程度把握できるようになった。基本図書収集についても同様に順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度で得られた結果を基に、地方各紙の論説収集作業を中心に進めていく。次年度は比較的部数の少ない新聞、新興紙も積極的に収集するが、既存紙に対抗して創刊された第2県紙をはじめ、大半が国立国会図書館・東京館に所蔵されている大都市夕刊紙以外の新聞は可能な限り本年度中に一応収集を完了できるように努めたい。収集した論説の整理・検討についても「朝鮮戦争」に関する論説は勿論のこと、「(アジアとの関係を含めた)講和」「憲法・再軍備」に関する論説の整理・検討を進める。その上で(先行研究の摂取も踏まえつつ)これらの問題についての再検討作業も着手する。本年度は別のテーマの論文執筆も多くあるため確定はできないが「中間報告」的な研究発表・論文執筆にも着手したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度と同様、朝鮮戦争をはじめ、講和・安保論議や憲法・再軍備関連の論説記事を収集するための費用(複写代)とそのための出張経費(旅費)が研究費使用のメインとなる。出張は複写代が相対的に安価である各県立・市立図書館を中心に、他に所蔵図書館が存在しない場合は国立国会図書館と横浜・新聞ライブラリーを訪問する予定である。今年度予定していた論説記事収集目的の出張を一部取りやめたため未使用額が生じたが、次年度は一部取りやめた分も含めた出張を行う。テーマに関する基本図書・新刊本は可能な限り購入し、消耗品もその都度必要であるので研究費を使用したい。
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