研究課題/領域番号 |
23720332
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
梶居 佳広 立命館大学, 経済学部, 非常勤講師 (60537306)
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キーワード | 朝鮮戦争 / 新聞論説 / 東アジア認識 / 憲法・再軍備認識 / 講和・安保認識 |
研究概要 |
本研究は、朝鮮戦争(1950~1953年)が日本の内外政策に関する論議や東アジア認識に与えた影響について,日本各地の地方紙を中心とした新聞メディアの論説を整理・検討することを目的としている。 平成24年度は、前年度同様、朝鮮戦争を中心に、対日講和・日本とアジアの関係、再軍備と憲法問題についての日本各地の新聞論説を収集する作業を行い、全国約80の新聞社のうち約60については収集を完了することができた。論調整理については、まだ十分・詳細な検討にまで至っていないが、朝鮮戦争について南北朝鮮の内戦という認識が希薄で「国際共産主義諸国の策動」と「策動を防ぐための国際連合の正当な活動」と理解する新聞が多数であったことが明らかとなった。全体に国家としての南北朝鮮、朝鮮人の存在感が日本の新聞論説では非常に希薄であったということ、講和問題については大多数の新聞が戦争勃発以降、韓国を支援する西側陣営のみの「単独講和」に傾斜したことも指摘できよう。また1953年の「久保田発言」による日韓会談決裂が「韓国に対抗すべく軍事力を強化すべき」として同時期に展開していた日本国憲法(第9条)改正の論議に一定の影響を与えたこと、調査した期間に発生した在日朝鮮人の「諸問題」には一貫して冷淡で朝鮮植民地支配に対する「反省」が非常に希薄な新聞が多数であったことも明らかになった。なお分析が十分でない対中国・東南アジアへの認識も含め、以上明らかになった事実・特徴は今日の日本とアジア諸国との関係、憲法論議を考察するうえでも重要な論点であると指摘できよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、前年度同様、朝鮮戦争(1950―1953年)を中心に、対日講和・日本とアジアの関係、再軍備と憲法問題についての日本各地の新聞論説を収集する作業を行い、全国約80の新聞社のうち約60社については収集を完了した。詳細な論調整理はなお十分深められてはいないが、朝鮮戦争への理解、講和問題への影響、日韓関係、在日朝鮮人への認識全般の大枠は把握することができ、日韓会談の決裂が再軍備強化の主張として改憲論に一定の影響を与えた点については「1950年代の(日本国)憲法論議」に関する論文の中に盛り込むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
論説収集作業について、残り約20紙(多くが夕刊紙や地域紙)について出来るだけ早期に収拾を完了させることに全力を注ぐ。そのうえで今回の研究で検討したい問題(朝鮮戦争それ自体の他、講和問題、南北朝鮮をはじめとした東アジア諸国に対する認識、再軍備と憲法改正論議)への各新聞の関心の度合い、論調の特徴とその変化の有無について整理する最終的な作業も本格的に進めていくことにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年、24年度と同様、全国各地の新聞論説収集に相当な経費を必要としている。宿泊を伴う出張先としては国立国会図書館(東京都千代田区)、新聞ライブラリー(神奈川県横浜市)の他、諏訪市図書館(長野県)、名古屋市立鶴舞中央図書館、福岡市総合図書館、佐賀県立図書館、日帰りの出張先として国立国会図書館関西館(京都府精華町)、奈良県立図書館などを予定している。また関係文献の購入代はもちろん、収集した論説の最終的な整理作業の際にも経費が必要となる可能性がある。
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