本研究は、朝鮮戦争(1950~1953年)が日本の内外政策(特に再軍備と憲法問題、講和論議)ならびに南北朝鮮をはじめとした東アジア認識に与えた影響について、日本各地の地方紙を中心とした新聞メディアの論説を整理し検討するものである。 最終年度はこれまで作業が十分でなかった比較的発行部数の少ない地域紙・大都市夕刊紙(東京タイムス、北陸新聞、名古屋タイムス、都新聞、大阪日日新聞、新大阪、夕刊フクニチ、デーリー東北、石巻新聞、信陽新聞、南信日日新聞、大和タイムス、長崎民友、佐世保時事新聞)を中心に、関東、近畿、九州の既存地方紙(埼玉新聞、伊勢新聞、奈良日日新聞、佐賀新聞、長崎日日新聞、大分合同新聞、日向日日新聞)も加えた各新聞の複写収集を行った。その結果、東京の一部新興紙や国立国会図書館・横浜新聞ライブラリーに未所蔵である一部地方紙を除く全地方紙(75紙)の朝鮮戦争中の論説・社説の複写収集作業を完了させることができた。 収集論説の内容検討についても本格的に着手し、12月と1月の2回、学会(研究会)報告を行った。収集した論説が膨大な数に達したこともあって論文・データ提供については今後=来年度に順次発表することにしている。 最後に、全国各紙の朝鮮戦争・日韓関係に関する論説の簡単な概要は以下の通りである。1.朝鮮戦争に関する論説は平均50~100本程度で、実際の戦局を反映し開戦からの1年が多くを占めた。2.論調は「国際共産主義の侵略に対する「自由世界」の防衛」との理解が基本で戦場になった朝鮮(人)への関心は極めて低い。ただし、アメリカ=国連軍の軍事力による解決を重視する新聞と国際連合を舞台とした話し合いによる解決を志向する新聞に分けることはでき、この「相違」は再軍備・講和論議の対立とある程度重なっていた。3.朝鮮(人)、日韓問題については、概ね韓国・朝鮮側の行動に批判的な見解が多かった。
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