研究課題/領域番号 |
23720335
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
引野 亨輔 千葉大学, 文学部, 准教授 (90389065)
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キーワード | 浄土真宗 / 献上儀礼 / 講中 |
研究概要 |
平成25年度は、芸備地域の真宗寺院・真宗門徒が本山西本願寺に対して行った懇志上納について、その契機や社会的影響力を探った。 そのなかでも、備後福山藩領の懇志上納集団である「備後御畳講」については、府中信岡家文書を分析することで、実態が明らかになる。平成25年度は、千葉大学人文社会科学研究科の大学院生数名に古文書解読の研究補助を依頼したため、「備後御畳講」の実態分析をスムーズに進めることができた。 真宗講中による本山への懇志上納は、親鸞や蓮如の遠忌に際して、本山の側が大々的に呼びかけ、その影響で増減するものと考えられている。確かにそうした側面は否定できないが、信岡家文書の分析によると懇志上納の発展・衰退はもう少し複雑な背景を有している。例えば、懇志の徴収に際して中心的な役割を果たす有力門徒には、地域社会のなかでヘゲモニーを握ろうとする意図がみられるし、他方で、講中を離れ、より少人数の懇志上納を行うことで、本山の権威を直に感じ取ろうとする人々も存在している。 このように、懇志上納という行為を、上納される本山と、上納を行う地域社会との両面から分析することは、江戸時代に献上儀礼が果たしてきた役割を解明する上で、極めて効果的であると考えられる。 また、本年度も前年度に引き続き、西本願寺と地方寺院の往復書簡集である『安芸国諸記』や『備後国諸記』の解読を進めた。公式書簡を集めた『安芸国諸記』や『備後国諸記』のような『諸国記』は、一つ一つの事件を詳細に追うには不向きであるが、本山-末寺の主張を双方向的に探る上では有益といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、前年度に写真撮影した信岡家文書の解読を、千葉大学人文社会科学研究科の大学院生数名に依頼したため、「備後御畳講」の実態分析をスムーズに進めることができた。 もっとも、古文書解読によって得られた知見を学術論文としてまとめるまでには至っていないため、成果の発表は最終年度である平成26年度に精力的に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
信岡家文書の解読は、昨年度に引き続き、千葉大学人文社会科学研究科の大学院生に依頼し、分析の迅速化を図りたい。また、信岡家の現当主は、昭和期の備後御畳講について、その活動を良く知る人物なので、平成26年度に1度備後府中を訪問して聞き取り調査を実施する予定である。 なお、「備後御畳講」の実態分析は、当該科研でもっとも力を入れたところであるので、本年度はその成果を研究発表や学術論文というかたちで結実させていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額はわずかであり、当該科研の予算執行はおおむね計画通りに進んでいる。 上記の通り、予算の執行はおおむね計画通りに進んでいるため、平成26年度の予算使用も当初の計画通りに進める。具体的には、千葉大学人文社会科学研究科の大学院生に信岡家文書などの解読を依頼し、史料読解の迅速化を図るとともに、旅費を使用して備後府中を訪問し、信岡家現当主からの聞き取り調査を行う。
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