近年多くの研究者が指摘するように、江戸時代は高度に洗練された儀礼重視社会であった。徳川幕府や諸藩だけでなく、仏教本山もまた、信者から様々な献上品を受け取り、下賜品を授け返すことで、宗教的権威を維持していた。本研究では、そうした献上行為の一例として、備後御畳講の活動を取り上げた。備後御畳講は、江戸時代を通じて、地元の特産品である畳を、西本願寺堂舎の修復のために献上していた組織である。本研究では、この畳献上を通して宗教的権威が維持されていく構造を明らかにするとともに、献上行為が地域社会内部にもたらす対立や葛藤の存在についても指摘した。
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