本研究では、日英史料を用いて多角的な視点から幕末期の国際関係を解明した。幕末期のフランスによる幕府支持とイギリスによる長州藩支持という通説的な見方は一面的であるため、イギリス政府の文書や新聞などから全体像を分析した。その結果、イギリス政府は幕府と長州藩の対立に中立方針をとっており、駐日公使も幕府と長州藩に和解を勧めていたこと、一方でイギリス新聞の記事には貿易利益を優先して有利な方を支持する傾向がみられることを明らかにした。また、下関開港問題をもとにイギリスと長州藩の貿易志向を日英両史料から分析した結果、イギリス駐日公使らが大名との直接貿易を実現しようとしていたことを明らかにした。
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