研究課題/領域番号 |
23720338
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研究機関 | 山梨県立博物館 |
研究代表者 |
海老沼 真治 山梨県立博物館, その他部局等, 学芸員 (20574156)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 内陸地域交通 / 甲斐・信濃 / 東山道 / 御坂・神坂 |
研究概要 |
平成23年度は、本研究に関わる研究文献の収集と、刊行史料集による交通・交易関係史料の集積作業を中心に行なった。交通・交易関係史料の集積では、甲斐国の関係史料について、「古代・中世甲斐国交通関係文献史料」(『山梨県立博物館 調査・研究報告2 古代の交易と道』、2008年)の補遺を行うとともに、信濃国の古代~中世前期段階の関係史料を『信濃史料』から集積した。まだ十分なものとはいえないが、現段階で得られた関係史料の概要とその所見について、平成24年3月に研究協力者と開催した研究会において、「中部内陸地域交通の一視点」として中間報告を行なった。報告では、平成23年6月に行なわれた古代交通研究会シンポジウム「山国の古代交通―東国の峠・坂・川―」での議論をふまえながら、甲斐・信濃を結ぶ交通の状況を概観するとともに、関東・東海地域から甲斐・信濃を経由して北陸地域を結ぶ交通路の存在に注目した。この交通路は、先行研究においてもそれほど注目されておらず、今後より詳細な分析を行なっていく必要があると考えられた。また現地踏査として、平成24年1月に信濃神坂峠周辺の遺跡等の踏査を行い、阿智駅推定地や阿智神社・神坂神社、伊那郡における東山道推定路などを確認した。信濃神坂峠周辺の遺跡立地状況は、甲斐御坂峠周辺の状況を考察する上でも参考になるものと思われる。また出土資料も豊富にあることから、継続して調査を行なっていくことで、内陸地交通の特徴のひとつである峠の交通の実態を解明することが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作業の中心として計画していた信濃国の交通・交易関係史料の収集については、中世前期段階までの史料について概ね完了することができた。絵図調査については、新たに館に収蔵された甲斐国絵図の調査を行なった。古道の現地景観調査については、県内は随時実施したほか、長野県で神坂峠周辺の調査を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
史料収集については、信濃国関係を継続して実施するほか、飛騨・越後等近隣地域についてもあわせて史料収集を行なうこととしたい。絵図調査については、甲斐国関係の絵図調査を継続して行なうほか、信濃国関係の絵図調査も行ないたい。古道の現地景観調査については、県内は引き続き随時実施するとともに、長野県についても1回調査を実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用することとなった研究費については、以下のとおりである。(1)旅費については、研究会1回と他地域事例調査について、年度内に実施するための調整がつけられなかったため、次年度に実施することとしたい。(2)設備備品費については、空中写真の購入を検討していたが、研究協力者よりウェブ上で空中写真を閲覧できるシステムの情報提供を受け、本研究にも十分使用可能であると判断されたため、購入による入手を取りやめ、次年度以降に関係図書・地形図等の購入に使用することとしたい。(3)作業補助員雇用のための謝金については、平成23・24年度に計上しているが、本年度に実施した史料収集で得られた分量が、予定していた作業量よりも少なかったため、24年度の史料収集である程度の分量が集積された段階で、集中的に行なうこととしたい。
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