研究課題/領域番号 |
23720340
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
馬場 基 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (70332195)
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キーワード | 出土文字資料 / 木簡 / 史料学 / 地理情報 / 時空間情報 / データベース |
研究概要 |
平成24年度に実施した作業は大きく3つである。 ①木簡地名の抽出と、数値化作業:古代の行政地名(国・郡・鄕)のうち、国名についてはその国府所在想定地または国府関連遺跡などのリスト化を終了し、郡名については郡家遺跡がほぼ判明している遺跡についてはそのリスト化をおおむね終了した。また、リスト化した所在地の座標データを収集した。以上の作業により、木簡に記載された地名について、現在の段階で知られる地名のリスト化・数値化はほぼ終了したと考えている。なお、こうして作成した地名および地名数値化データの一部は、科学研究費補助金基盤S「木簡など出土文字資料釈読支援システムの高次化と綜合的研究拠点データベースの構築」で開発している木簡画像データベース・木簡字典に反映させ、公開した。 ②木簡出土遺構の数値データとしてのリスト化:近年の調査についてはほぼ見通しが立ちつつあるものの、古い時期の発掘調査データについては、測量基準のあり方が現在とは大きく異なる。こうした発掘調査については、現在数値化の方向性を模索中である。 ③木簡内容分析の基礎作業の一貫としての食品名整理作業:食品は表記方法が多様な上、現在とは呼称が異なるなどの問題が存在する。また、加工状況等によって、地理的に整理できる産地情報と、どの程度直接的に関連づけられるかというような点が変化するので、極力加工状況に関する情報も入手することが臨まれる。こうした点を解決するための基礎的な整理作業を、料理研究の立場から集積された情報を援用しつつ行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に抱えた遅れを、完全には取り戻せていないと考える。 情報の数値化やその整理作業はほぼ当初計画に追いつくことができた。また、データベースへの反映など、当初計画以上の成果も上がりつつある。木簡情報の整理作業は、計画通りもしくは当初計画を越えた進捗を見せつつあると考えている。 一方、GT-MAP等を用いての実際的な分析実験が、当初計画通りには進んでいない。初年度の遅れを取り戻す作業を、基礎作業である情報整理・数値化を中心に進めたことが最大の理由と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度で最終年度のため、研究を以下の3方向に収斂させて、成果を挙げることを目指す。 ①時空間分析システムを用いての分析作業:当初計画していたGT-MAP等での分析はもちろん、そのほかのツールを用いての分析も行い、出土文字資料の時空間分析方法確立に向けた検討を行う。 ②木簡内容分析用の情報整理作業:食品情報を中心に作業を進めているが、これを一定の完成水準に到達させる。なお、この成果については時空間分析に用いる以外に、単独でその成果を公表する方法も模索している。 ③木簡関連地理情報の補充とGIS等との連携方法の検討:ほぼ終了している木簡関連地理情報リスト化の補充を行う。また、考古学研究などで蓄積されているGIS研究とコネクトさせつつ発展させるための方向性を検討し、必要な情報を追加する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究状況・目的から、大きく以下の4つを想定している。 ①分析研究等のための打ち合わせ・助言を求める旅費:発掘調査成果と文献資料の統合的分析事例を有する東京大学史料編纂所等他機関や、研究者に分析の方向性や成果公表の方法について助言や意見を求める。 ②データ整理・拡充と分析作業実験補助のための謝金 ③分析作業遂行のための物品類の購入:データ保管装置、関連書籍類の購入等を想定している。なお、現在、コンピュータ類は必要数を確保しているとは考えているものの、作業の進展に併せて不足する見通しであれは新規に購入する可能性も排除していない。 ④成果公開等のためのシステム改良費:研究成果の一部は、『木簡字典』等既存のデータベース等で公表・還元している。研究成果が増えた場合でも、これらのデータベース郡の改良などを通じて、迅速なその公開・還元・共有化に努めようと考えている。
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