古代の国・郡地名の数値データ化を行い、ほぼ終了した。郷以下の詳細地名は、一部について実験的に数値化を行った。また、平城宮・京内の木簡出土遺構の位置情報の整理を行い、数値化作業を行った。これらの情報は、奈良文化財研究所が公開している木簡画像データベース『木簡字典』を通じて公開し、地名情報から地図へのリンクにが可能になっている。 本年度はさらに、これらの数値化データの時空間分析に着手した。平城宮内裏北外郭出土木簡群(国指定重要文化財)は、天平18年頃に一括して「廃棄」された木簡とされる。一方、木簡に記された「年紀」=木簡「作成」の年にはばらつきがあることが知られており、これらを木簡に記された「地名」と関連づけて分析する作業を行った。年代のばらつきは、地名と有意な関連性がある様相が確認されつつあり、既往の研究成果と整合性の高い見通しを得ている。以上から、この手法で、データ化を終えた木簡を分析すれば、これまで見落としていた新たな地名と年代の関連が見いだせることが、ほぼ確認できた。 分析は、高田祐一氏が特許を有する分析支援システムによる。なお、当初予定していたGT-MAP等ではなく、本システムを採用した理由は、高田祐一氏が現在、研究代表者と同じ奈良文化財研究所に勤務しており、技術的支援を受けやすいためである。
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