研究課題/領域番号 |
23720343
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
蓮田 隆志 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20512247)
|
キーワード | ベトナム / 近世 / 文書 / 現地史料 |
研究概要 |
本年度の研究成果としては、蓮田隆志「ベント・ティエン「アンナン国の歴史」簡紹:情報の流通と保存の観点から」『環東アジア研究センター年報』8、pp.1-30、2013年2月を刊行した外、一般向けの解説として「近世ベトナムについて」『歴史と地理』656、pp.35-40、2012年8月を刊行した。 現地調査は冬季にベトナム北中部のタインホア省にて実施した。トスアン県を中心に文書・碑刻文を収集することができた。とくに元和16年の紀年を持つ磨崖碑は、同時代史料が皆無の成立期後期黎朝の地方統治を考える上で極めて重要な材料と言える。摩滅がひどいために磨崖碑の文面を完全に復元することは困難だが、復元し得たいくつかの断片的な単語からこの地方に後期黎朝の王権が及んでいたことはほぼ間違いない。 また、口碑史料からもこの地域が15世紀以来、開国功臣子孫の集住地であったことはほぼ間違いない。阮朝期に至るまでの納税文書も収集し得たため、これらを検討することで、地方統治の実態を再構成することが期待できる。 以上から、後期黎朝が開国功臣子孫に積極的に働きかけることでタインホア山間部の支配を強固なものにしようとしてきたことが推測される。 一方で、家譜史料の収集状況はあまり芳しくなかった。そのため、17世紀以降のこの地域の状況については、家譜史料が余り役立たず、また石刻史料もそれほど多くないため、文書史料が孤立して存在する状況である。これについては他の地域との比較検討が必要と考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査での資料収集は概ね順調であった。但し、元和年間の磨崖碑の発見により、準備中の論文の内容に変更を加える必要が生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度のため、夏期の現地調査以降は研究成果のとりまとめに集中する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
夏期に現地での史料調査を行う。場所はハノイ特別市内を予定している。
|