2011年に開始した本研究は、二度の出産・育児休業による中断を経て、長期にわたったが、ついに最終年度を迎えることになった。残念ながら計画したとおりには進められなかったが、それは同時に、研究スタート時には認識できていなかった課題を発見でき、それらの予想外のつながりを見通すことができたという収穫でもあった。適宜、方向修正をしながら、漁業問題という具体的な外交懸案の実態分析を通して、開港期における朝鮮外交の新しい姿を描く作業を進展させることができたと考える。 本年度は、これまでの調査・史料分析をまとめる段階であり、主に論文の執筆に従事した。その成果は、2019年10月4日、韓国・仁荷大学校で開催された国際学術会議「近現代韓国・韓国学研究と東アジア」において、「漁業問題をめぐる開港期朝鮮の対日本外交政策」(原題は韓国語)として発表した。1889年に成立した日朝通漁規則の交渉過程を、これまで使用されてこなかった史料を活用してより詳細にあきらかにすることで、日本の要求を拒絶しきれなかった失策としてのみ評価されてきた朝鮮外交が、実は最も問題が多発していた済州海域の通漁を禁止する問題と関わった構想のもとに展開されていたことを跡づけ、広く韓国内外から集まった韓国学研究者から有益な助言を得た。 最終確認の必要性から、2020年1月に外交史料館における史料調査、2020年2月に韓国全羅道の現地調査を行った。これらの調査をふまえて、①「日朝通漁規則(1889年)締結交渉の再検討―済州島通漁問題をめぐって」、②「開港期朝鮮の対日漁業税徴収政策―山田荒治事件を中心に」の二本の研究論文を研究誌に投稿中である。
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