研究概要 |
本研究の目的は、碑刻史料の現地調査に基づき、中国華北社会における「宗族」概念の変化を通時的に解明することにある。 2012年5月と8月に中国山西省・陝西省にて現地調査を行い、その結果は「“孫公亮墓”碑刻群の研究―12-14世紀華北における“先瑩碑”の出現と系譜伝承の変遷―」, 『アジア・アフリカ言語文化研究』, 第85号, pp.61-170, 2013年3月.として刊行された。また、現地調査の成果について、アメリカ・ドイツ・フランス・中国の国際学会にてそれぞれ研究発表を行い、それぞれの国の研究者から有益なフィードバックを得ることができた。 2012年8月には河南省でも現地調査を行い、この結果は “Mongols, Confucians, and the Dragon King: the Ritual Transformation of a Non-Han Community in the Yuan, Ming, and Qing,”としてまとめられ、Asia Major, 27-1 (June, 2014)に条件付きで採用された(修訂期限は2013年9月)。また、The Journal of Song-Yuan Studies, vol. 44 (September, 2014)へ投稿した論文も、採用が条件付きで決まっている。その他、中国でも関連する報告を複数行ない、その中のひとつ「金元時期北方社会演変与“先瑩碑”的出現」を中国の学術誌『中国史研究』に投稿し、これも修訂を条件として採用が決定されている。 いずれの論文・報告でも、異なる時代の異なる読者が、碑刻を自らに関心に引きつけて解釈し、「宗族」概念や自己認識の変化を促進・正統化していたことが明らかとなった。また、14世紀に立てられた碑刻が、21世紀の周辺住民の民族概念にも多大な影響を及ぼしていることも分かった。
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今後の研究の推進方策 |
まず、昨年度に暫定的に採用が決まっている2本の英文論文、“Aspiring Between Two Cultures: Official and Scholarly Life of Northerner (Hanren) Literati in Yuan China,” The Journal of Song-Yuan Studies, vol. 44 (September, 2014)と“Mongols, Confucians, and the Dragon King: the Ritual Transformation of a Non-Han Community in the Yuan, Ming, and Qing,” Asia Major, 27-1 (June, 2014)の修訂と提出に最大限の努力をはらう。 さらに今年度も、中国での現地調査を行なう。具体的には、2013年9月に山西省呂梁市にて、山西大学中国社会史研究中心の張俊峰教授の援助を受けて、碑刻史料の収集調査を行なう。この調査には、Syracuse UniversityのJeehee Hong講師も同行するべく調整を進めている。 さらに、2013年9月に、清華大学の方誠峰講師と「“宋代政治史研究的新視野”国際学通研討会」(北京大学)で、パネルを組織して研究報告を行なう予定となっている。 現在英語での著書刊行の機会を得る可能性があり、これまでの2年間の研究成果および今年度の研究成果を結集し、「先瑩碑」とよばれる系譜記録碑の変遷から、前近代華北社会における「宗族」概念の特質、そしてその「中国史」上における意義について論じる著書の原稿を完成させることを目指す。
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