中世末期フランスにおける慣習法の公的編纂について、(1)王権側の基本史料、(2)国王立法権に関する最近の議論、(3)諸侯領制度史の検討から、王の政策と前後してまたその影響下で、いくつかの諸侯領においても慣習法編纂が進められたことが以後の王国地方統治に多様性を与えたことが明らかとなる。本研究は15世紀後半アンジュー公ルネの慣習法改定事業を焦点に、1463年完成の慣習法テキストや公の書状の分析を通じて、この事業が君主権力と当該社会に有した意義を検討した。それは地元実務家の抵抗を招いたが、ルネは王権威を梃子に、慣習法の改定と公布を通じて、地元における法の源泉たろうとしたことを提示した。
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