本研究は、教皇庁の各部局の組織や役人、さらに教皇の身辺の世話をする奉公人(家人)についてその役割や俸給を記した「教皇庁構成員便覧」とでもいうべき、14世紀初頭成立の文書を検討しつつ、中世中期の教皇庁諸部局及び人員の構成と役割を明らかにした。 なかでも慈善組織をなした施与局と救護院の活動実態と人員編制の解明に重点を置き、大きな特徴として、教皇庁付属の救護院の中には、地理的に頻繁に移動を繰り返した教皇庁に付随して移動する救護院が存在した点を強調した。これは他の部局についてもあてはまると考えられ、教皇庁の空間的移動と組織編制のあり方に関係性を見出し、それを検証する意義があることを明らかにした。
|