本研究は、18世紀の中央ヨーロッパにバルカン半島のオスマン帝国領から到来した商人集団の活動を、ハンガリー中央部のギリシア商人、トランシルヴァニア(現ルーマニア)のブルガリア商人に注目して分析した。18世紀中頃にピークに達するハンガリーにおけるギリシア商人の活動が妻子を故郷に残した出稼ぎの形態で行われたこと、1770年代以降に進められた定住化を経ると商人集団内での言語による差異化が進んだこと、ブルガリア商人は18世紀中頃以降に急速に農民化していったことが明らかになった。また、これら陸路のバルカン商人ネットワークと地中海のギリシア商人ネットワークの比較検討も行った。
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