研究課題/領域番号 |
23720363
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
堀内 隆行 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (90568346)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 南アフリカ / イギリス帝国 / カラード / ブリティッシュ・アイデンティティ |
研究概要 |
代表者は中長期的には、20世紀前半期南アフリカの非ヨーロッパ系とブリティッシュ・アイデンティティとの関係について、アフリカ人などの問題も含めて全体像を構築することを課題としている。平成23~25年度はカラード(南アフリカにおいては、他国のように有色人種の総称ではなく、ケープタウン周辺の先住民、解放奴隷、混血の人々の意)をめぐって研究する予定で、23年度はとくに、この時代の画期となった第一次世界大戦の、カラードにとっての意味を探った。 24年1月28日には京都大学人文科学研究所共同研究班「第一次世界大戦の総合的研究」において、伊藤順二氏(コーカサス近代史)、石井美保氏(南アジア研究)とともにシンポジウム「帝国を使いつくす―第一次世界大戦と植民地統治―」をおこなった。このなかで、代表者は「19世紀の終焉―南アフリカと第一次世界大戦―」と題して報告した。これは、20年6月23日に同共同研究班でおこなった報告を発展させ、大戦を「南アフリカの19世紀」=「イギリス帝国支配の世紀」の終焉と捉えたものである。焦点はカラードの問題にあり、拙稿「192、30年代南アフリカのカラード」(『史林』94巻1号、23年1月)の内容をふまえ、またかれらの政治組織であるAPO(アフリカ政治機構)の機関紙『APO』や、ケープ歩兵軍団の従軍記などにも言及した。 その他、井野瀬久美惠・北川勝彦編『アフリカと帝国―コロニアリズム研究の新思考にむけて―』の書評(『西洋史学』242号、23年9月)、Rena van den Bergh氏の南アフリカ法制史にかんする報告へのコメント(24年2月4日)などをとおして、カラードをとりまく外的状況の整理をおこなった。さらに、中学校・高等学校への出前授業など、研究成果の社会的還元にも努めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究実績の概要】にも記したとおり、1月には報告をおこなっているが、本研究外の守秘義務をともなう業務に忙殺され、原稿化にはいたらなかった。また、同様の理由により、当初予定していた南アフリカ・ケープタウン(国立図書館、ケープタウン大学など)での史料調査もおこなえず、その結果、先述の『APO』の分析がとくに不十分となった。概して、研究は進んでいるものの、歩みは遅いといえよう。
|
今後の研究の推進方策 |
【現在までの達成度】に記した諸点をふまえ、24年度はまず原稿化の作業にとりかかりたい。具体的には『新しい歴史学のために』の特集「ヨーロッパにおける『中央-地方』/『地方-地方』関係の生成と変容」においてケープの問題を論じるつもりであるので、ここでカラードと第一次世界大戦との関係についても整理したい。同論文は、この年度に着手を予定しているカラード・ヨーロッパ人協議会、非ヨーロッパ人統一運動などの研究についても見通しを与えるものとなるだろう。 こうした原稿化にめどをつけたうえで、つぎに、やはりこれまでおこなえていなかったケープタウンでの史料調査を敢行したい。さらに以上の成果について、25年度までに論文を2本執筆したいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
23年度は物品費、その他については当初予定どおりであったが、学会、研究会のための国内旅費が大幅に生じた。しかし、ケープタウンでの史料調査がおこなえなかったので、結果的には残が出た。 24年度はこの史料調査のための旅費が中心になる。また前年度に引き続き、南アフリカ史関係図書の購入も重要となる。さらに、特集「ヨーロッパにおける『中央-地方』/『地方-地方』関係の生成と変容」への寄稿にともなう論文の別刷費、郵送費も発生する。
|