中世初期イングランド社会の構造を人的ネットワークから再検討するために、最近の「集会」研究に注目した。その結果、国制における国王集会と在地集会の繋がりの重要性だけでなく、各々の集会内部で個人間の紐帯が枢要な機能を果たしていたと確認できた。また地域共同体と王権の関係では、従来のトップダウン型での説明では不十分で、説得、交渉、妥協を通じて実現される「合意に基づく統治権」という視点が必要とされていた。以上の先行研究の整理から、集会を場としてそこで取り結ばれる人間関係を再現することで、王権、エリートそして親族関係だけでなく、領主権および地域社会の絡み合う、立体的な社会構造を把握できる可能性を提唱した。
|