フランス美術における愛国的な意識は、アンシァン・レジーム期から、流派、様式、主題、造型表現、展示方法などに確認された。しかし革命によって「過去」が否定の対象となると、革命の成果を称讃するイメージがそれらに取って替わった。1793年に開館するルーヴル宮の美術館は、この新しい国民のイメージを定着させ、革命の精神を視覚化する格好のメディアと期待された。だが担当の委員会の議論や展示内容と方法の分析からは、忌避すべき過去から継承したとみなされる点が随所に認められた。今回の検証から、開館時の美術館がナショナル・アイデンティティ創出に果たした政治的役割は限定的であったと結論づけられる。
|