1. ウェールズのジョンの説教術書の内容と、前後する時代の説教術書との比較分析作業を進め、それらと併せて同時代の説教を検討する作業を行った。その結果として、とりわけ13世紀後半以降の説教形式の進化において「語的一致」というテクニックの導入が一つの画期をなし、さらにそれが説教者のあいだに大きな波紋を引き起こしていたことが明らかになった。著名な説教者らによる同テクニックの否定論にもかかわらず「語的一致」は定着していったのである。その背景を検討する作業に関しても一定の成果を得て、下記の成果報告を行った。また、このテクニックの導入および定着と深く関連する「語句別聖書索引」の写本の検討をオックスフォード大学ボドリアン図書館、同大学マートン・カレッジとオリエル・カレッジの図書館で行った。 2. 口頭発表 上記の成果については、平成24年7月に立教大学で開かれたインテレクチュアル・ヒストリーのシンポジウム、同月にイギリス・リーズで開催された国際中世学会(International Medieval Congress)における説教術書に関するセッション、さらに平成25年2月にリーズ大学中世研究所のセミナー Medieval Group で報告を行った。 3. 論文等公刊 上記の報告と深く関連する論文が、ヒロ・ヒライと小澤実の編集による中央公論新社から2014年中に刊行予定の論文集に収められる。また Brepols 社からの単著刊行が予定されている。
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