本研究の目的は、19世紀の南アフリカを主たる対象に、そこで顕在化した先住民保護の精神とイギリス帝国支配の関係を考察することにあった。本研究を通じて、先住民保護の精神の多様な側面を明らかにすることができた。まず、史資料調査で得られた知見をもとに、キリスト教会と先住民保護の精神とのかかわりあいについてのより精確な歴史像を提示した。さらに、関連文献の網羅的な収集・読解や新規の史資料調査を通じて、先住民保護の精神を同時代のさまざまな問題関心や思想潮流との関係で分析した。これにより、先住民保護の精神の多様な態様とそれに関与したさまざまなアクターの動機や関心を析出した。
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