本研究は、13世紀後半のイングランド王エドワード1世の家政組織の具体相を分析することを通じて、空間とコミュニケイションという観点からプランタジネット朝宮廷の性格を解明した。エドワード1世の家中と移動宮廷を分析し、家中で活躍したサヴォワ人の経歴を当時の政治状況の中に位置づけ、移動宮廷における会計記録の作成を検討した。また、アキテーヌ公とその統治下のガスコーニュ地方の家臣との関係を分析し、中世における家臣のアイデンティティが主君とのコミュニケーションによって多面的に形成されることを指摘した。以上の研究を遂行する中から、アキテーヌ公領を当時の社会的諸関係や諸制度の投影=領域として捉える視点を得た。
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