研究課題/領域番号 |
23720384
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
佐々木 正治 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 助教 (60457380)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 中国古代 / 製鉄 / 鉄器生産・流通 / 集落・都市 / 国際研究者交流・中国 / 国際情報交流・中国 |
研究概要 |
本研究では、中国古代における製鉄、鉄器生産から流通・使用に至る一連のプロセスを明らかにし、それが古代集落・都市の発生・発展にどのような影響をもたらすかを解明することを目的としている。そのため2011年度においては、四回中国に渡航し、主に河南省文物考古研究所所蔵資料の調査をすすめ、データベース化を図った。 調査の中心となったのは、安陽市曹操高陵出土鉄器・面池県製鉄遺跡出土鉄器・内黄県三楊荘集落遺跡出土鉄器などである。曹操高陵出土鉄器に関しては、同研究所から報告書作成のための出土鉄器の整理を正式に依頼され、数量・種類等をデータベース化し、基礎整理を行った。また面池県出土鉄器などは4000点以上あることが判明したため、2012年度に同研究所と研究代表者の所属するセンターの間で正式な研究協定を締結し、それを下に本格的な整理・調査・研究を進めることとなった。 また、以上の鉄器がどこで作られたかを明らかにするため、文献資料の調査を進め、それに基づき河北省武安県において製鉄遺跡の踏査を進めた。それにより、漢代の大規模な製鉄遺跡を発見することができた。これについては2012年度、河北省文物保護センターの協力の下、調査を継続する予定である。 この他、本研究を進める過程で、中国社会科学院考古研究所から依頼を受け、河南省洛陽漢墓群の出土鉄器500点あまりの整理を行った。これにより当地の古代鉄器の概要を知ることができた。この資料についてはRP剤(防腐剤)とエスカル(保存袋)を用いて保存処理を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年度においては、おおむね予定していた通り資料調査を進めることができたが、遺跡により資料数が多く、基礎整理の一部が残った部分もある。また申請時の目的の通り、漢代から魏晋南北朝時代の各時代の資料を見ることもできたが、ただし、より古い戦国時代の資料についてはやや手薄になった感がある。以上の不足分については2012年度においても継続する必要がある。 また、当初の目的以上に、河北省武安県製鉄遺跡のように重要な遺跡の発見ができたほか、予定になかった洛陽漢墓群出土鉄器の整理により、漢代に存在したほぼ全ての鉄製品が確認できるなど、目的以上の成果もあった。
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今後の研究の推進方策 |
出土資料整理・遺跡調査を中心に進める。初年度の整理資料のうち、曹操高陵出土鉄器に関しては、選別して図化を進めるとともに、甲冑の復元作業等も行う面池製鉄遺跡出土鉄器は、資料数・数量等についてのデータベース化を継続する。三楊荘集落遺跡の鉄器については、図化を進める。なお、三楊荘集落遺跡については、その発掘担当者を日本へ招へいし、シンポジウムを開催する予定である。 新たに発見した河北省武安県製鉄遺跡に関しては、河北省文物保護センターの協力の下、現地調査を継続し、2012年度においては鉄鉱石・鉄滓・炉壁などのサンプルの採取を行い、成分分析などを行う。 この他、国内外において学会発表・論文発表を進め、総合的研究に備える。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外渡航3回を予定しているほか、中国より河南省文物考古研究所第三研究室主任である劉海旺研究員を招へいし、愛媛大学と東京においてにてシンポジウムを開催予定である。また、国内において学会発表を予定している。この他、河北省武安県製鉄遺跡のサンプル分析のため経費を計上する。
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