研究課題/領域番号 |
23720385
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
小野 林太郎 東海大学, 海洋学部, 講師 (40462204)
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キーワード | 国際共同発掘調査 / インドネシア / 北マルク諸島 |
研究概要 |
研究成果としては、まず8月にかけて、インドネシアのマルク諸島北部およびスラウェシ島北部を中心とした遺跡発掘調査を実施するにあたっての調査許可および調査ビザの延長申請を進めることができた。その上で8月末よりマルク諸島へ移動し、ハルマヘラ島北部のトベロ地区にて先史遺跡の発掘調査を実施し、土器や人骨、動物遺体を中心とした多くの遺物を収集することができた。また発掘後にはジャカルタへ移動し、インドネシア側のカウンターパートとなる国立インドネシア考古学研究所への報告と次回の調査計画の詳細について検討した。 日本滞在中の10月~1月にかけては、出土遺物のうち、特に年代測定の分析を中心とした分析を実施し、さらに2013年の2月~3月にかけては再びハルマヘラ島北部のトベロ地区にて先史遺跡の発掘調査を継続実施し、新たに多くの考古資料を収集することができた。これらのさらなる分析は2013年度への継続となるが、炭素年代測定による遺跡年代の確定や、土器を対象とした様々な分析などにより、ハルマヘラ島北部への人類の移住や新石器時代以降における島嶼適応の実態にアプローチできる可能性が極めて高く、当初に予定していた本年度の成果は十分に達成できたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず達成点の一つとして、インドネシア国内において遺跡発掘調査を実施するにあたって必要不可欠となる調査許可申請の延長手続き、そして実際に発掘調査を計二回実施できたことがあげられる。このうちインドネシアにおける調査許可および調査ビザ等の取得・延長手続きはかなり複雑で、また長期に及ぶものであるが、8月中の滞在で何とかこの手続きを終了できたことは、その後の9月に発掘調査を遂行する上で重要なプロセス、成果であったと考えられる。 さらに9月にはハルマヘラ島北部にて発掘調査を実施することができ、継続して2013年2月からも発掘を再開でき、2011年度に実施した発掘遺跡とは異なる時代・性格の遺跡より多種におよぶ考古資料を収集できたことは大きな成果であった。中でも多様な形態をもつ土器や、フィリピン諸島方面でも出土が確認されている土器文様が出土したことから、新石器時代後期における海上交易や周辺世界との人の移動や流通にもアプローチできる可能性が出てきたことは大きな成果の一つであろう。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は大きく二つの方向で進める。一つは初年度、および2012年度の発掘調査で出土した遺物となる大量の人骨のほか、動物骨、魚骨、貝類、貝製品やインド産の可能性がある青ガラス製腕輪やビーズ類のさらなる分析を実施し、マルク諸島における人類の移住や資源利用、海上交易の歴史を明らかにしていく分析研究の継続である。 二つ目に、最終年度となる2013年度は発掘調査を実施しないかわり、今後の研究において改めて発掘対象とできる良好で歴史的価値の高い遺跡の確認調査を実施し、その上で今後もインドネシアでの共同発掘調査を実施できるように、ジャカルタの国立考古学研究所や各地方の考古局、地方自治体関係者らとの良好な関係性を維持するための打ち合わせや、これまでの調査成果に関する報告会の開催や報告書の提出が重要となる。同じくインドネシア国内だけでなく、日本国内や海外においてもその成果を学術誌や国内外の学会等にて積極的に公表していく計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用内訳としては、まずインドネシアにおいて、前年度までの発掘調査で出土した遺物の分析、新たな遺跡の発見を目的とした踏査、および現地研究機関との打ち合わせや成果報告かかる外国旅費や滞在費があげられる。近年、インドネシアでは出土遺物を海外に持ち出すことは原則的に禁止されており、科学分析に必要なサンプル資料以外は、インドネシア国内にて分析を実施しなくてはならない。このため前年度までに発掘調査で出土した遺物の多くも、インドネシアの研究機関に保管されており、分析を実施するにはインドネシアに滞在する必要がある。 いっぽう、前年度の発掘で出土した遺物のうち、炭化物等は炭素年代測定、ガラスや土器は産地同定などの分析を行う必要があり、分析費用が発生することが予想されるため、研究費の一部はこれらの分析に使用する予定である。また人骨や魚骨の分析に必要となる分析器具や、国内の研究機関に所蔵されている標本の参照などを目的とした消耗品の購入や国内旅費にも一部の利用を予定しているほか、国際学会での成果発表にかかわる外国旅費の利用も予定している。
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