研究課題/領域番号 |
23720388
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研究機関 | 大手前大学 |
研究代表者 |
中井 淳史 大手前大学, 史学研究所, 研究員 (80411768)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 中世 / 土師器 / 土器生産 |
研究概要 |
研究計画(1)様式論に関する理論的検討については、研究の前提となる要素であり、国内外や隣接諸分野の研究状況の把握を中心にすすめた。とりわけ、美術史学や建築史学の動向について最新の研究成果を参照することができ、計画遂行のための基礎づけの一助となった。 研究計画(2)資料の調査については、兵庫県下の出土事例について情報収集をすすめたものの、具体的な資料調査の機会を設けるには至らず、本年度は準備にとどまった。そのかわり、計画申請時では想定していなかった他府県の資料を実見・検討する機会をいくつか得ることができた。具体的には、木津川河床遺跡、吉井川河床遺跡という物資の集散地と想定される遺跡の出土資料を検討する機会を得ることができ、集散地にあつまる土師器の分類作業を通じて、土師器の在地生産と流通の問題を考えるための手がかりが得られた。これらの成果を、本来の計画とどう結びつけていくかが以後の課題となる。 研究計画(3)土器生産に関する文献史料の集成と分析については、計画案で示した土佐国の事例検討をすすめた。『長宗我部地検帳』にみえる土器工人関連史料の集成であるが、数度にわたる調査を実施し、全史料の検索を完了して関連史料の抽出を完了することができた。比較対照の材料として、土器工人以外の職人関連史料も集成することができた点は大きな成果といえる。史料はカード化して整理し、データベース化にも着手したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画(3)について、当初示した史料集成作業が完了できた点は、まず満足すべき成果といえる。しかしながら、想定以上に史料の数が膨大であったこともあり、史料のデータベース化による整理という点では着手段階にとどまった点は課題である。研究計画(1)は研究の前提を整備する部分であり、きわだった成果を出しづらいのであるが、隣接諸分野の動向について知見を得られた点は、ある程度計画を達成できたと評価できよう。(2)についても、当初計画案による兵庫県下の資料は着手できなかったものの、他府県の資料を検討する機会を得て、ある程度の知見を得ることができた。 以上を鑑みて自己評価をおこなうならば、計画で示したすべての課題について着手できたものの、詳細では作業の遅れもみられる。総合的に判断するならば、まずまずの進展状況ということができるのではないかと考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画(1)については、今後も関連分野の成果を参照して様式論に関する知見を深めていくことが課題となる。研究計画(3)は、23年度で集成したデータの整理と分析をすすめ、土佐国の文献史料(地検帳)からみえる土器工人の存在様態について、論文による成果公表をめざして考察とまとめをおこないたい。研究計画(2)はこれと関連させるかたちで資料の選定をおこない、実際の検討をすすめる。具体的には、土佐地域の中世遺跡について情報を収集し、(2)との比較対照で検討可能な資料の選定をすすめる。また、兵庫県下の資料については、おおよその情報を得た段階であるので、各地域で特徴的なもの中心に、資料の実測や写真撮影などの具体的な作業に着手したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度については、資料調査のための旅費支出が中心となると考えられる。研究計画(3)で示した土佐国の史料についても、データ整理の過程で若干の不備がみつかっているので、その補充調査をおこなう必要がある。また、遺跡情報についても現地の図書館等で収集をすすめるほうが効率的であるので、数度にわたる資料調査が予想される。そのほか、兵庫県下の資料調査を実施する場合も相当の旅費が必要となろう。 このほか、調査にともなって、文房具費(図面・写真用整理ファイル、用紙など)や写真撮影にかかわる費用(フィルム代・現像焼付)で相当量の支出が想定される。さらに、研究計画(2)に関する中世遺跡の情報収集や、研究計画(1)に関連して、図書購入費もある程度見込まれよう。
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