研究課題/領域番号 |
23720388
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研究機関 | 大手前大学 |
研究代表者 |
中井 淳史 大手前大学, 史学研究所, 研究員 (80411768)
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キーワード | 中世 / 土師器 / 手工業生産 |
研究概要 |
研究計画(1)に関しては、関連分野の研究動向についての情報収集をすすめ、美術史学や建築史学などの分野における議論を参照した。 研究計画(2)については、平成23年度から派生した課題として備前吉井川河床遺跡および山城木津川河床遺跡の遺物調査をおこなった。とくに土師器について法量の計測や実測、写真撮影などをおこない、それぞれの遺跡の傾向について知見を得ることができた。そのほか、山陰地域を中心に中世後期の土師器資料を検討する機会を得て、情報の収集につとめた。 研究計画(3)土器生産関連史料の集成として、平成24年度は『長宗我部地検帳』にみえる史料の集成および分析をおこなった。史料の集成については平成23年度までにほぼ終えていたものの、整理の過程で少なからぬ遺漏もみられたこと、また比較材料として土器工人以外の職人関連の史料も把握しておくことが有効であると考えられたことから、再度数回にわたる史料調査を実施した。以上の調査で得られた史料をデータベース化することとし、必要な項目を整理して入力をおこない、史料の追加や訂正も含め、平成24年度で作業を終えることができた。さらに、作成したデータベースをもとに、土器工人の存在様態についての検討を開始した。その結果、土佐国における分布の規模については整理をすることができたが、一方で、これら土器工人が寺院・神社との密接な関わりをもって存在していることがわかったため、あらたな課題として、土佐国における15~16世紀の寺社の動向について、関連史料を検討しておく必要が生じた。これについては作業に着手したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画(3)について、当初の予定であった『長宗我部地検帳』の調査を一通り終えることができた点に、研究の進展をみることができる。が、その分析をすすめた結果、派生していくつかの問題を解決しておく必要があり、そのために関連する史料を検討する必要性があらたに生じた。 研究計画(2)については、各地の資料を検討する機会を得て、地域の土師器様相に関する情報や、研究をすすめていくうえでのいくつかの見通し・論点を得るにいたったものの、具体的な作業、すなわち実測や写真撮影など資料化の点は十分にすすんでいない部分もみとめられる。 以上を考えると、ある程度当初の目的は達成されてはいるが、あらたな問題点の発生による資料検討の必要や、考古資料の検討に関する作業で課題をなおのこしていることから、(3)と自己評価しておきたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画(2)について、対象となる遺物群の資料化(実測・写真撮影)をともなった検討を早急にすすめていく必要がある。具体的には、兵庫県下の資料群(播磨、丹波、但馬地域)と、生産工人の復元という観点から成果が期待できる一括性の高い土師器資料である(いくつかの城郭遺跡や寺院遺跡から出土した遺物を想定している)。数日単位で実見する機会を設け、遺物の観察から知見を得るとともに、併行して実測や写真撮影をおこない、考察を可能にするための資料の収集をすすめる。 研究計画(3)については、『長宗我部地検帳』の分析から明らかになった、土師器工人の分布状況を整理するとともに、ほかの職人に関する史料と対比して、文献史料から把握可能な土師器工人の存在様態に関する具体的な考察をおこなう。先述のように、寺院・神社との関わりが深いことが明らかになりつつあるので、関連する寺社史料の所在状況も検討して、可能なものについては収集・分析をすすめる。 これと併行する考古学的な検討として、高知県下の良好な中世遺物を集成し、いくつかについては実見や資料化をおこなって、両者をつきあわせて考察するための基礎資料を整理する必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
以上のような研究推進の方策をふまえて、各地の文献史料・考古資料の調査に関する国内旅費を中心に使用していきたいと考える。これにともなって、考古遺物の資料化のための文房具、フィルム等が消耗品等として、またこれら資料はデジタルデータとしても保存する必要が生ずるので、そのための費用も一定量必要となろう。 考古資料および文献史料はできるかぎり実見して検討する機会を設けたいと考えるが、時間的な制約からすべてについて実施できるとも考えにくい。そのため、史料集や発掘調査報告書など二次的資料からの検討もすすめていく必要がある。その収集のための図書費および資料複写費もある程度必要になるものと思われる。
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