近畿地域における弥生時代の鎔銅技術を明らかにすることを目的とし、近畿地域を中心とした青銅器生産遺跡から出土する金属成分付着被熱砂を比較検討し、その性格を明らかにし、併せて金属成分付着被熱砂に関連する高坏状土製品の使用方法について検討するものである。これら資料の使用方法を検討することは近畿地域とその周辺部における弥生時代の青銅器鋳造技術の一端を明らかにすることへとつながる。 平成24年度は23年度の成果を踏まえ、弥生時代の鎔銅技術の変遷について検討した。前年度の成果とは、近畿各地の青銅器生産遺跡から出土する高坏状土製品と金属成分付着被熱砂の検討から弥生時代の鎔銅方法が据え付け炉と高坏状土製品(取瓶)を使用するものから、据え付け炉を使用しないで高坏状土製品を坩堝兼取瓶に利用するよう変化したと指摘したことである。この成果を踏まえ、弥生時代前期から後期、古墳時代初頭にかけての社会変化と青銅器生産の変遷について発表し、論文にまとめた。また関連資料集成を作成した。 弥生時代の鎔銅技術の変遷はこれまで漠然と捉えられており、実態が不明であったが東奈良遺跡での取瓶に使用された高坏状土製品の確認は弥生時代中期における据え付け炉を使用した鎔銅方法が拠点集落内で行われていたことを示している。これにより弥生時代の鎔銅技術は据え付け炉と高坏状土製品(取瓶)を使用したものから高坏状土製品を坩堝と取瓶に兼用したものへと変遷していくことを明らかにすることができた。
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