本研究では三次元計測の手法を用いて、飛鳥時代の石工技術にかんするマクロ、ミクロなデータを収集し、その実態について検討した。その結果、飛鳥時代後半の二上山凝灰岩の生産・流通では、寺院・宮殿の基壇外装石、古墳の墳丘外装石、石槨石材などの各種製品が同一の技術で加工されており、石切場付近で完成の域にまで仕上げられた上で、消費地各所に一元的に供給されていた状況を明らかにした。また、そうした飛鳥時代後半以降の二上山凝灰岩製品の生産・流通の発達は、飛鳥時代初頭に朝鮮半島から導入された硬質石材(花崗岩類)の加工技術が古墳時代以来の伝統的な軟質石材(二上山凝灰岩)へと応用されることで達成されたものと理解できた。
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