研究課題/領域番号 |
23720397
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
丸山 真史 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (00566961)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 骨角製品 / 動物遺存体 / 古代 / 中・近世 |
研究概要 |
骨角製品の素材となる動物は、古代からその死に対する穢れの意識が生じ、動物解体を担う人々への賤視は中世から近世にかけて強化される。本研究は、このような時代背景に注目し、骨角製品と伴出する動物遺存体を同時に分析することで、古代から近世の骨角製品の生産体制や生産者(職人)の社会的立場の変遷の解明を目的としている。 平成23年度は、畿内を中心に古代以降の骨角製品や未成品、その製作過程で生じる廃材について、発掘調査報告書から集成を行った。大阪府、奈良県、京都府で出土している骨角製品などの集成が終了した。古代以降の遺跡から出土する骨角製品などの多くは、古代、中世にそれほど多くないが、近世になると増加し、大阪や京都の市街地の近世遺跡に集中していることが明らかになった。このことは発掘調査の実施状況を反映しているように思われるが、近世都市内部における盛んな骨角製品の製作を示していると考えられる。このような集成作業は、畿内における骨角製品の体系的な分類を行うための基礎資料となり、生産体制や職人の社会的立場を明らかにする上で基盤を成す。また、大阪府大阪市佐賀藩蔵屋敷跡および兵庫県神戸市兵庫津遺跡から出土した骨角製品の実測を行い、資料化したことは、今後の研究資料の蓄積となる有意義なものである。 骨角製品の素材として多用されるニホンジカの角や中手骨・中足骨を素材とした製作実験を平成24年度に行うにあたり、鋸で骨を切断するなどの予備的な実験を行った。この結果、現代の工具によって製作実験を行うことができることを確認し、平成24年度の研究準備を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究状況は、畿内で出土している骨角製品、未成品、製作時に排出される廃材の集成を行う計画を立てていた。実際の作業では、畿内の中心的地域である大阪府(摂津・河内・和泉)、奈良県(大和)、京都府(山城)の集成が終了した。また、未報告の資料として、兵庫県神戸市兵庫津遺跡、大阪府大阪市佐賀藩蔵屋敷跡から出土した骨角製品の実測を行い、新たな資料を追加することができた。 集成作業は、畿内の摂津を含む兵庫県の集成作業が途中までとなっているが、平成24年度に継続して作業を行う目途をたてた。集成が終了した京都の近世遺跡で、骨角製品の素材となる牛馬骨、鹿角が、それぞれ異なる時期の遺構から出土したことから、骨製品、角製品の製作に関して区別されていたであろうことが判明しつつあり、論文執筆の準備をしている。また、平成24年度に計画している骨角製品の製作実験にむけての準備も行っており、ほぼ当初の計画通りに研究は進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究は研究計画に従い、骨角製品の製作実験を行う。これまで遺跡から出土した骨角製品、未成品、廃材から推定されている製作工程について、実際に素材となるニホンジカの角、中手骨・中足骨を用いて、現代の工具によって実験的に製作を行い、画像による記録をとる。このことによって、遺物に残された道具の使用痕跡の工具や製作の手順を明らかにする。昨年度に集成が終了した京都について、近世の骨角製品の製作工房では、素材となる牛馬骨と鹿角が、異なる時期の遺構から出土し、素材によって製作が区別されていることを明らかにする論文をまとめる。また、平成23年度に引き続き、骨角製品などの集成を兵庫県、滋賀県、和歌山県について行う。これら両年度において集成したデータを、集成表としてキーワドによって検索が可能な状態に整理する。これらの最終年度にあたる平成25年度には、それまでに行った骨角製品などの集成をもとに、畿内における代表的な骨角製品の体系的な分類を行い、推定されていた製作工程の実証的復元、工具の特定によって、骨角製品の製作に関する実相を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
2年目となる平成24年度には、実際の遺物から製作工程が推定されている骨角製品(笄や栗形)について、製作実験を行うため、その素材としてニホンジカの角、中手骨、中足骨を購入する。骨角製品などの集成作業の継続および骨角製品の製作実験のための作業補助者への謝金として使用する。集成データの整理等にかかるパソコンおよび周辺機器、民俗学および考古学の図書の購入を予定している。
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