研究課題
骨角製品の素材となる動物は、古代からその死に対する穢れの意識が生じ、動物解体を担う人々への賤視は、中世~近世にかけて強化される。本研究は、このような時代背景に注目し、骨角製品と供出する動物遺存体を同時に分析することで、古代から近世の骨角製品の生産体制や生産者(職人)の社会的立場の変遷の解明を目的としている。研究初年度の平成23年度は、畿内を中心に古代以降の骨角製品、未成品、その製作過程で生じる廃材について、発掘調査報告書から集成を行った。2年目の平成24年度には、実際にシカの骨や角を、現代のノコギリやノミなどの工具を使用して、実験的に加工することで骨角製品の製作に使用した工具の推定を行ってきた。最終年度の平成25年度は、集成した畿内の骨角製品および関連する動物遺存体をコンピュータに入力し、簡易に遺跡および出土物を検索できるようにした。また、昨年度行った現代の工具を使用した製作実験で得た加工痕の観察により、遺物に残る加工痕から工具を推定を試みた。また、大阪市の大坂城下町跡から出土した江戸時代の双六の駒製作に関連する資料の分析を行い、製作規模や作業工程の復元を行い、その成果を動物考古学会において発表した。また、古代から近世の骨角製品の集成および尼崎市大物遺跡、福岡市博多遺跡、大阪市大坂城下町跡から出土した中世から近世の骨角製品およびその製作に関連する動物遺存体の分析をもとに、韓国忠北大学における国際ワークショップにおいて口頭発表し、その後、論文として成果を発表した。その他、兵庫津遺跡第57次調査において出土した江戸時代のバイゴマ(バイガイ製)、櫛(牛馬骨製)、擬餌針(鹿角製漁具)などの骨角貝製品の実測、分析を行い、その成果を神戸市教育委員会発行の発掘調査報告書において報告した。
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すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)
『発掘された骨たち』神戸市埋蔵文化財センター企画展展示解説書
巻: 神戸市埋蔵文化財センター企画展展示解説書 ページ: 21-40
『難波宮址の研究』
巻: 19 ページ: 127-136
動物考古学
巻: 30 ページ: 121-136
湖西考古学
巻: 29 ページ: 97-123