研究課題/領域番号 |
23720399
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
與倉 豊 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (70586552)
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キーワード | 産業集積 / 見本市 / 展示会 / テンポラリークラスター / 諏訪 / 福岡 |
研究概要 |
当該年度はデザイン集約的な見本市の例として、福岡におけるファッション産業集積とファッションショーおよび展示会を分析対象として、商工会議所といった主催者への聞き取り調査を行った。前年度までに調査を行った長野県諏訪地域における技術集約的な見本市(諏訪圏工業メッセ)と、福岡県における半導体産業の成長を狙った国際的なワークショップ(MAP)の分析と比較・検討することにより、日本の特徴的なテンポラリークラスターの事例として位置付けることが可能である。さらに当該年度の後半には大阪の国際的な見本市開催の現状についても調査範囲に含めて分析を行っている。 またテンポラリークラスターの一例として研究会や勉強会、異業種交流会のような一時的な集まりにおける知識結合を分析対象として含め、それら日本独特な主体間の関係構築の状況をインフォーマルネットワークと名付けて分析を行った。事例として取り上げたのは産業支援機関による研究会への支援体制が整っている静岡県浜松地域である。当該地域における研究会参加主体のデータベースを構築し、インフォーマルネットワークが有するポテンシャルを社会ネットワーク分析を用いて検討した。インフォーマルネットワークの関係構造と、共同研究開発に基づくフォーマルネットワークの形成との関連性について考察した結果、浜松地域の場合には県外からの参加主体や,複数の研究会に流動的に参加する主体によって,新奇的な知識を獲得するチャネルが確保されることにより,信頼を基にしたフォーマルネットワークが形成されうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の5月に上海で行われた見本市に関する国際的なカンファレンスである、「Asia-Pacific Conference on Trade Fair Ecologies」に参加し、日本の事例として長野県諏訪地域におけるローカルな見本市での関係性構築の現状について報告した。それら成果は、Edward Elgar社の書籍(Temporary Knowledge Ecologies: The Rise and Evolution of Trade Fairs in Asia-Pacific) に収録される予定である。さらに本年度は静岡県浜松地域におけるインフォーマルネットワークの分析成果について、雑誌「E-journal Geo」において論文として発表したほか、「現代の立地論」など書籍においても分担執筆として論文を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの現地調査をもとに、テンポラリークラスターにおける主体間の関係性構築や、産業集積全体の成長・発展について、現状把握とともに今後の展望を示していく。なお調査先への出張旅費への支出が多くなったため,研究進捗状況に併せるために,当該年度においては予定していたデータ入力作業を行わなかった.次年度にデータ入力作業において大学院生の協力を得る予定である.特に、福岡県における半導体産業の事例においては、調査先から半導体関連企業に関する関係性を考察することが可能な貴重なデータをいただいており、それらデータをもとに、主体間の関係性を表す指標を算出し、社会ネットワーク分析などの手法をもとに計量的な把握を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は国内外で研究成果を発表するための旅費,見本市主催者や公設試験研究機関などへの聞き取り調査の旅費,その他論文作成のための諸経費が必要となる.また半導体関連のデータ入力の際には、大学院生からの協力を得る予定であり、謝金が必要となる。
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