研究課題/領域番号 |
23720402
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
神田 孝治 和歌山大学, 観光学部, 准教授 (90382019)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 文化地理学 / 景観 |
研究概要 |
本研究は、日本における自然公園の指定にあたり、海域景観がどのように認識され、いかなる理由でそこが公園に含まれたのかを、社会的コンテクストの変化に注目しながら、その歴史的変容について文化地理学的に考察するものであり、特に平成23年度は「(1)戦前の国立公園の風景地選定における海域景観に対する認識」と、「(2)戦後の自然公園における海域景観認識と観光との関係性」を明らかにするための作業に重点を置いた。また、なかでも戦前から戦後の海の自然公園の選定についての概要を明らかにするための資料調査を主として行った。 まず(1)については、「戦前の国立公園の思想家の海域景観認識」、「戦前の国立公園に関する議論と海域景観 」、「戦前の国立公園の指定と海域景観」という3つの観点から、古書を中心とする資料を収集し、その内容を検討した。 特に国立公園の選定に深く関わった田村剛の著した書籍や、戦前期から海の風景に注目していた脇水鐵五郎の著書を入手し検討を行うことで、海の風景に対する認識が戦前期においていかに変容しているかを考察した。 また(2)については、「戦後の自然公園の指定と海域景観認識」と「戦後の海域景観の自然公園指定と観光」という2つの観点から、資料収集とその内容の検討を行った。なかでも沖縄および奄美の海中公園についての資料収集に重点を置き、与論島の海中公園についてはその指定と現地の観光化に関して「与論島観光におけるイメージの変容と現地の反応」(観光学6, 2012, pp.21-31)においてその成果の一部を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画は「(1)戦前期の海域景観認識と国立公園との関係性に関する思想および議論に関して特に集中的に調査を行う」ことと「(2)戦前から戦後の海の自然公園指定に関する問題についても順次調査を進める」ことを主としていた。(1)の調査対象としては「戦前の国立公園の思想家の海域景観認識」、「戦前の国立公園に関する議論と海域景観 」、「戦前の国立公園の指定と海域景観」 の三項目を掲げ、(2)の調査対象としては「戦後の自然公園の指定と海域景観認識」と「戦後の海域景観の自然公園指定と観光」という二項目を挙げていた。 「研究実績の概要」で示したように、 (1)については古書を中心とする資料を収集してその内容を検討し、(2)についても特に沖縄および奄美の海中公園に注目して考察を行い、与論島の海中公園についてはその成果の一部を学会誌において発表している。そのため、現在までの達成度としてはおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
「海域景観の自然公園指定に関する文化地理学的研究」と題した本研究課題においては、(1)「戦前の国立公園の風景地選定における海域景観に対する認識」を検討し、海の風景地に注目することで戦前期における国立公園選定および近代の自然景観認識の問題を再考しその特徴を明らかにすること、(2)「戦後の自然公園における海域景観認識と観光との関係性」を検討し、特に国立公園指定にあたっての海域景観認識と海洋レジャーの発達との関係性や、海中公園指定にともなう新しい海域景観認識を明らかにすること、そして(3)「近年の海域公園における海域景観認識とその特徴」を検討し、海域公園の考えによって生じてくる新しい海域景観認識について、進行する議論と選定過程を検証しつつ、既存の自然公園における議論とも比較しながらその特徴を明らかにすること、を目的とした。こうした目的を達成するために、(1)については(a)「戦前の国立公園の思想家の海域景観認識」、(b)「戦前の国立公園に関する議論と海域景観 」、(c)「戦前の国立公園の指定と海域景観」 の三項目を、(2)については(d)「戦後の自然公園の指定と海域景観認識」と(e)「戦後の海域景観の自然公園指定と観光」の二項目を、(3)については(f)「海域公園に関する議論とその特徴」の一項目を調査対象に掲げた。平成23年度は、これらを実現するために、(a)~(e)の5項目を調査対象とし、特に(a)と(b)に重点を置いた。 今後の研究の推進方策は、平成24年度については、(a)~(f)について実施し、特に(c)から(f)に重点を置くことにする。具体的には、重要と考える個別事例を取り上げて詳細な資料調査を行い、関連文献のレビューと共に近年の海域公園に関する資料収集と検討も始める。平成25年度については、(d)~(f)についての調査を主とし、(a)~(c)については補足調査とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、戦前から戦後の海域景観の自然公園指定に関する問題と海域公園に関する議論とその特徴について集中して調査し、また戦前期の海域景観認識と国立公園との関係性に関する思想および議論に関しても研究を継続すると同時に、関連する文献レビューの補足収集も実施する。 そのため、関連書籍や論文の収集のために、書籍代、複写費、短距離交通費を要する。また、海域景観を自然公園に指定した地域の資料収集・現地視察を実施するために、国内における資料・現地調査が必要であり、そのために、国内旅費、書籍代、複写費、地図・絵葉書などの資料代を要する。さらに、国内での研究途中成果の発表を予定しており、そのために国内旅費を要する。
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