研究課題/領域番号 |
23720402
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
神田 孝治 和歌山大学, 観光学部, 准教授 (90382019)
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キーワード | 文化地理学 / 景観 |
研究概要 |
本研究は、日本における自然公園の指定にあたり、海域景観がどのように認識され、いかなる理由でそこが公園に含まれたのかを、 社会的コンテクストの変化に注目しながら、その歴史的変容について文化地理学的に考察するものであり、平成24年度は「(1)戦前の国立公園の風景地選定における海域景観に対する認識」に関する検討を継続しつつ、特に「(2)戦後の自然公園における海域景観認識と観光との関係性」と「(3)近年の海域公園における海域景観認識とその特徴」を明らかにするための作業に重点を置いた。 まず(1)については、「戦前の国立公園の思想家の海域景観認識」、「戦前の国立公園に関する議論と海域景観 」、「戦前の国立公園の指定と海域景観」という3つの観点のうち、特に「戦前の国立公園の指定と海域景観」に注目し、前年度収集した田村剛の著書等の資料を中心に検討をすすめた。 また(2)については、「戦後の自然公園の指定と海域景観認識」と「戦後の海域景観の自然公園指定と観光」という2つの観点から 、資料収集とその内容の検討を行った。前年度に引き続き沖縄および奄美の海中公園についての資料収集に重点を置き、与論島の海中公園についてはその指定と現地の観光化に関して、神田孝治著『観光空間の生産と地理的想像力』(ナカニシヤ出版, 2012)の第6章「与論島観光におけるイメージの変容と現地の反応」(pp.201-226)においてその成果の一部を発表した。さらに、雲仙天草国立公園と西海国立公園内の海中公園指定に関する資料の収集も行った。(3)については、特に奄美群島国定公園内における海域公園に焦点をあてながら資料を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画は、(1)「戦前から戦後の海域景観の自然公園指定に関する問題」と(2)「海域公園に関する議論とその特徴」について集中して調査し、(3)「戦前期の海域景観認識と国立公園との関係性に関する思想および議論」に関しても研究を継続すると同時に、(4)「関連する文献レビューの補足収集」も実施するというものであった。また、(1)の調査対象としては「戦前の国立公園の指定と海域景観 」、「戦後の自然公園の指定と海域景観認識」、「戦後の海域景観の自然公園指定と観光 」の三項目を、(2)の調査対象としては「海域公園に関する議論とその特徴」を、(3)の調査対象としては「戦前の国立公園の思想家の海域景観認識」と「戦前の国立公園に関する議論と海域景観 」の2項目を挙げていた。 「研究実績の概要」で示したように、 (1)については特に沖縄 および奄美の海中公園に注目して考察を行い、与論島の海中公園についてはその成果の一部を学術書において発表しており、(2)および(3)についても資料収集をすすめ、(4)についても英語圏における学術的視座に関する資料を収集している。そのため 、現在までの達成度としてはおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
「海域景観の自然公園指定に関する文化地理学的研究」と題した本研究課題においては、(1)「戦前の国立公園の風景地選定における海域景観に対する認識」を検討し、海の風景地に注目することで戦前期における国立公園選定および近代の自然景観認識の問題を再考しその特徴を明らかにすること、(2)「戦後の自然公園における海域景観認識と観光との関係性」を検討し、特に国立公園指定にあたっての海域景観認識と海洋レジャーの発達との関係性や、海中公園指定にともなう新しい海域景観認識を明らかにすること、そして(3 )「近年の海域公園における海域景観認識とその特徴」を検討し、海域公園の考えによって生じてくる新しい海域景観認識について、 進行する議論と選定過程を検証しつつ、既存の自然公園における議論とも比較しながらその特徴を明らかにすること、を目的とした。 こうした目的を達成するために、(1)については(a)「戦前の国立公園の思想家の海域景観認識」、(b)「戦前の国立公園に関する議論と海域景観 」、(c)「戦前の国立公園の指定と海域景観」 の三項目を、(2)については(d)「戦後の自然公園の指定と海域景観認識」 と(e)「戦後の海域景観の自然公園指定と観光」の二項目を、(3)については(f)「海域公園に関する議論とその特徴」の一項目を調査 対象に掲げた。 これらを実現するために平成23年度は、(a)~(e)の5項目を調査対象として特に(a)と(b)に重点を置き、平成24年度は(a)~(f)について実施し特に(c)から(f)に重点を置いた。 今後の研究の推進方策は、最終年度の平成25年度については、(d)~(f)についての調査を主とし、(a)~(c)については補足調査とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、戦前から戦後における海域景観認識と自然公園指定の問題について、戦後を中心に調査を行う。またこれら既存の自然公園と海域景観との関係性をふまえ、海域公園に関する議論とその特徴についての検討を行う。具体的には、今後の研究の推進方策で示したように、「戦後の自然公園の指定と海域景観認識」 、「戦後の海域景観の自然公園指定と観光」、「海域公園に関する議論とその特徴」についての調査を主として、「戦前の国立公園の思想家の海域景観認識」、「戦前の国立公園に関する議論と海域景観 」、「戦前の国立公園の指定と海域景観」についての補足調査を実施する。 こららを実施するにあたり、関連書籍や論文の収集のために、書籍代、複写費、短距離交通費を要する。また、海域景観を自然公園に指定した地域の資料収集・現地視察を実施するために、国内における資料・現地調査が必要であり、そのために、国内旅費、書籍代、複写費、地図・絵葉書などの資料代を要する。さらに、国内での研究途中成果の発表を予定しており、そのために国内旅費・大会参加費を要する。
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