研究概要 |
本研究は、日本における自然公園の指定にあたり、海域景観がどのように認識され、いかなる理由でそこが公園に含まれたのかを 、社会的コンテクストの変化に注目しながら、その歴史的変容について文化地理学的に考察するものである。 平成25年度は「(1)戦前の国立公園の風景地選定における海域景観に対する認識」と「(2)戦後の自然公園における海域景観認識と観光との関係性」についての補足調査及び考察を後者を中心に行うと同時に、「(3)近年の海域公園における海域景観認識とその特徴」についての考察を行った。まず(1)については、これまで収集した資料を中心に、吉野熊野国立公園などの事例に注目しながら検討をすすめた。 また(2)と(3)については、与論島の海中公園の指定や海域公園化を中心に考察した。そうした成果の一部は、2013年8月7日のIGU Kyoto Regional Conferenceにおいて、「Place-myths for tourists and the local responses:A case study of the Yoron Island in Japan」と題して行った口頭研究発表において報告した。 研究期間全体としては、上記(1)について、田村剛の思想の変化を中心に検討を行い、山岳中心の国立公園から海域景観を取り込もうとした状況、その後の戦中期における都市からの距離に注目した議論からの海域景観地域の候補地化について確認した。(2)については、与論島の海中公園指定と観光との関係を中心に検討を行い、その成果は神田孝治「与論島観光におけるイメージの変容と現地の反応」観光学6, 2012, pp.21-31、などで発表された。(3)については、海域公園をめぐる議論を検討すると同時に、ジオパークのような他の制度などにおいてかかる景観への関心が高まっている状況を確認した。
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