研究課題/領域番号 |
23720405
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
阿部 康久 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (10362302)
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キーワード | 立地調整 / コールセンター / 自動車産業 / 国有企業改革 / 中国 |
研究概要 |
本研究では、中国都市における立地環境の変化や立地調整の実態を把握するために、製造業におけるいくつかの代表的な企業を取り上げ、その製造部門とオフィス部門を対象とした調査を行ってきた。研究計画の時点で行う予定であった、遼寧省大連市における日本語コールセンターに関する調査結果については、同市にはHP(ヒューレット・パッカード)社を始め、相当数の企業が日本語コールセンターを設立していたものの、人件費や地価の高騰にともなうコスト上昇により、現地の優秀な日本語人材を確保できなくなったことで、日本国内に回帰している状況がみられた。この研究成果は、査読付学会誌に投稿・掲載することができた。 次に、製造業企業の生産部門を対象とした立地環境変化への対応と研究開発能力や生産技術の高度化に関する調査としては、調査対象の代表性を考慮しながら以下の4つの業種に属する企業を対象に調査・考察を行った。 1つ目の事例として、中国北部で有数の国有製鉄業企業である東北特殊鋼を事例として、同社の人員調整や工場・販売部門の立地再編に関する調査を行った。その結果は研究代表者が共編者となった著書の中で発表した。2つ目として、スウェーデンのボルボ社を買収したことでも有名な中国最大の民営自動車企業である吉利汽車を取り上げ、立地環境変化への対応として、同社の高級車開発・生産戦略とそれにともなう部品の調達先や調達方法の変化について調査を行った。その結果も査読付学会誌にて公表することができた。さらに本年度は、電器産業で最も早期に中国に進出した日系企業であるパナソニック社を対象として研究開発部門の現地化に関する調査を行ったほか、ソフトウェアの受託開発で中国最大手の企業であるニューソフト社(東軟集団)を対象として、ソフトウェア開発技術の水準と生産管理のあり方を調査した。これらの内容は今後、発表していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
4年間の研究期間のうち、2年間を修了した時点で、当初の研究計画に挙げた5つの調査のうち3つが完了し、既に学術雑誌などに公表している。これらの論文・著作のうち2編は、当該分野の中では知名度がある査読付の学術雑誌であり、他の1編は、研究代表者が共編者を務めた著書の1章として公表された。これらの研究成果は、数的にも、また掲載雑誌の知名度から判断しても、研究代表者が過去に獲得した研究助成金の研究成果を上回るものである。学界等でも比較的高い評価を受けているのを聞くことが多い。 あくまで、研究代表者の過去の実績と比較した上での相対評価であるが、当初の計画以上に進展していると評価しても良いように思われる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画策定の時点で、計画していた調査のうち、現在は完了していないものとして、2つの調査がある。今後、補足調査を行いながら、研究成果を学会の研究集会などで口頭発表すると同時に、学会誌などに投稿・掲載させていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画策定の時点で、計画していた調査のうち、現在は完了していないものとして、2つの調査がある。平成24年度までに、ある程度の調査は行っているものの、補足調査として、調査対象企業などへの聞き取り調査や、対象地域の企業活動の状況全体を把握できる統計資料の収集などを行う予定である。さらに、学会の研究集会などでの口頭発表や学会誌投稿の際に、ある程度の経費が必要になるので、使用させて頂く予定である。
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