本研究の目的は、社会的・文化的な性別役割分業といったジェンダー視点から、高度経済成長期に誕生した計画空間である都市郊外空間の変容と、そこに展開される住民の生活実践を明らかにすることである。具体的な課題は、おもに2点に集約される。第1に、調査対象地域(大阪府千里ニュータウン豊中市域)でのインテンシブなフィールド調査、また第2に、住民の地域「参加」議論とジェンダー地理学を中心とした理論的枠組みからの都市郊外空間の分析・検討である。 既に提出した交付申請書における2013年度(最終年度)の研究計画は、以下のとおりであった。①リストラクチャリングなどさまざまな変化のなかにある都市郊外空間と住民による地域「参加」の在り様について、ジェンダー地理学の枠組みから再検討し本研究の総括を行う。②本研究の新たな知見が、ジェンダーをめぐる地理学の国際的な潮流にどのように位置づき貢献し得るのか、英語圏諸国の人文地理学研究における最新の研究の比較・検討から研究動向を確認する。 これに対して、2013年度に実際におこなった実績は、以下のとおりである。①ジェンダー/エスニシティ/階級などを扱った地理学、その他隣接分野の文献により、これら座標軸を当てはめた考察を行い、論考として公表した。②日本の事例研究について、男/女の二元論を越えた議論を国内外の研究者に発信・議論するための国際学会(IGU京都大会)での報告を行った。③国際的なジェンダー地理学の動向と本研究の貢献について考えるための、会議や研究会等への参加・報告を行った。
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