研究課題/領域番号 |
23720410
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
小原 丈明 法政大学, 文学部, 講師 (70452258)
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キーワード | 土地所有 / 土地登記簿 / 庭園 / 都市名望家 / ネットワーク |
研究概要 |
本研究は土地所有および土地所有者に焦点を当て,明治期以降の都市空間の変遷を社会経済地理学の観点から考察することにある。本研究課題の2年目にあたる平成24年度には,平成23年度の基礎資料の収集調査を継続して実施するとともに,それら調査を基に選定した研究対象地域および研究対象者について,具体的な調査を行った。研究の詳細については,以下にサブテーマごとに記す。 1.都市における庭園の所有・利用に関する研究 本サブテーマの研究対象地域である京都市岡崎地区について,分析対象となる93筆(区画)の土地所有調査(土地所有者の氏名・所在地,土地所有権の変遷期日・理由,土地の面積・種別など)を行った。具体的には,前年度に一部収集していた土地登記簿謄本を基に,それ以前の情報が記載されている閉鎖登記簿(コンピュータ化に伴う閉鎖登記簿,移記閉鎖登記簿)や土地台帳を閲覧し,それぞれの区画について明治期まで遡って土地所有の変遷を明らかにした。明治期に政治家や実業家によって取得された土地が民間企業へと変遷するプロセスや,地元の個人・民間企業だけでなく,東京などの外部資本が介在するプロセスが明確となった。 2.都市大土地所有者の動向に関する研究 本サブテーマについては前年度に引き続き,都市レベルでの土地所有データの分析および特定の大土地所有者(一族)についての分析を行った。研究対象にした大土地所有者は幾つかの特定の人物(一族)と相互に土地の売買を行っていることが明らかとなった。また,それらの人物はビジネス上での関係もあることも判明した。以上より,特定の実業家同士がネットワークを形成し,その関係性の中で都市内の土地所有権の移動が行われてきた一端が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
サブテーマのうち,「都市における庭園の所有・利用に関する研究」については,前年度に選定した研究対象地域(京都市岡崎地区)に関する資料調査および現地調査を実施した。また,もう一つのサブテーマである「都市大土地所有者の動向に関する研究」に関しては,大阪を中心に研究対象の資料調査を実施した。 前者に関しては,研究対象地域の土地所有構造が複雑であり,土地登記簿を用いた資料調査に予定よりも時間が掛かっているため,並行して進めているデータ化および分析にやや遅れが生じている。後者に関しては,予定通りに資料調査を終え,分析を進めている。 また,上記のように研究にやや遅れが生じているため,平成24年度中に予定していた学会発表を行うには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画として,平成25年度においては,「都市における庭園の所有・利用に関する研究」における京都市岡崎地区の土地所有調査を継続して行っていく。土地所有に関する残りの資料を早急に収集し,データ化および分析を進めていく。 また,「都市大土地所有者の動向に関する研究」については,これまでに収集した資料を基に,都市レベルでのマクロ分析と個人レベルでのミクロ分析とを並行して行っていく。 そして,これまでの調査・分析の途中の成果は平成25年秋および平成26年春に開催される学会において発表を行う予定である。また,合わせて,学会誌への投稿の準備も行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
あらかじめ予定している平成25年度の研究費は当初の予定通りに使用する。平成24年度において,当初の予定よりも資料収集調査に行くことができず,また,資料の収集自体にも時間が掛かり,必要なすべてのデータを収集できていないことから,未消化分の研究費はその現地研究の費用および資料収集の費用として使用する。 また,継続して行っている土地所有のデータ化にも多くの労力を要するので,未消化分の研究費は謝金としても使用する。
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