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2012 年度 実施状況報告書

米軍統治下の沖縄における奄美諸島出身者の社会地理

研究課題

研究課題/領域番号 23720412
研究機関立命館大学

研究代表者

加藤 政洋  立命館大学, 文学部, 准教授 (30330484)

キーワード奄美諸島 / 米軍統治下 / 沖縄 / 基地 / 人口移動
研究概要

二年目に当たる2012年度は、1年目の現地調査(資料取集、聞き取り、フィールドワーク)の成果に基づき、本研究の根幹をなす奄美-沖縄の人口移動について論文をまとめ、「明軍統治下における奄美-沖縄間の人口移動」として発表した(掲載誌は『立命館地理学』第24号)。一般的な歴史書においては、「沖縄における本格的な基地建設の開始とともに、奄美から沖縄本島に流入してきた人たちは五万人に近かったといわれるが、奄美返還によってその一部は、京阪神や京浜地方に移った」ものの、「そのまま沖縄に残って外人登録を受けた人たちの数も二万八〇〇〇人にのぼり、未登録者を含むと、五四年ごろの在沖奄美出身者は約三万人と推定された」という指摘があるが(中野好夫・新崎盛暉『沖縄戦後史』、岩波新書、1976、71頁)、各種統計を用いて検証したところ、少なくとも統計上は3万弱の規模にとどまることが明らかとなった。ただし、いわゆる密航が頻繁に行われていた当時の状況を考えるならば、「沖縄とともに米軍政下に置かれた奄美から、仕事を求めて沖縄に渡った奄美人は、ピーク時には六万人とも七万人とも言われる」 という5~7万人規模の人口移動が起こったする語りは、むしろそうした統計に記録されない人口フローのありようをうかがわせている。
また、沖縄に流入した奄美諸島出身者の分布に関しても、おおよそ明らかになった。すあんわち、当時の那覇市の中心市街地を構成する旧那覇市と旧真和志市、さらには那覇市と連担して市街地化していた浦添村がその中心で、嘉手納基地のゲート前に形成されたコザ市、普天間基地の所在する宜野湾村がつづく。その他も、キャンプハンセン前の金武村や、キャンプシュワーブに隣接する久志村(辺野古)など、米軍関連施設の立地によって市街地化した場所に集積するという特色がみられたのである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

一年目の基礎調査が実を結び、奄美-沖縄間の人口移動に関する統計上のデータを踏まえて考察することができたゆえ、おおむね順調に進展しているといえる。また、奄美大島・徳之島・与論島における現地調査を実施し、とりわけ与論島では在沖与論会関係者への紹介を受けたことから、最終年度における掘り下げの端緒が得られたことは大きい。
また、文字数の関係で上記概要に記すことはできなかったものの、奄美諸島出身者の集住地区に関する分析もできたので(『立命館大学人文科学研究所紀要』第101号に「戦後沖縄における基地周辺の「歓楽街」―《泉町》と《辻新町》の成立をめぐって―」として発表)、進捗の度合いは順調である。

今後の研究の推進方策

次年度は最終年度に当たる。今後は、質的な調査に力点を移して研究を進めることにしたい。すなわち、喜界島・沖永良部島でのフィールドワークを実施した上で、すでに情報のある与論島出身者を中心に、聞き取り調査を進める予定である。その他、すでにコンタクトのある奄美諸島出身者の方にもお話をうかがい、ネットワークをひろげてゆくことにしたい。生活・就労に関する聞き取りとともに、「差別」のありように関しても、できる限り調査したいと考えている。
これと並行して、権利回復にまつわる制度変遷を法令・条例や新聞記事などを通じて整序し、沖縄が本土に復帰する1972年までの在沖奄美出身者の境位を明らかにする予定である。

次年度の研究費の使用計画

上記の通り、沖永良部島・喜界島ならびに沖縄島におけるフィールドワークを実施するため、関係する旅費を計上する。また、昨年度・今年度を通じて収集した資料で未整理のものが多数あるため、アルバイトを雇用してデータベース化することにしたい。
その他、基本的な文献、文房具などの消耗品、さらには複写にかかる費用が発生する予定である。
なお、人文地理学会や日本地理学会で成果を発表する場合は、ポスター等の作成費や旅費も必要となろう。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 戦後沖縄における基地周辺の「歓楽街」―《泉町》と《辻新町》の成立をめぐって―2013

    • 著者名/発表者名
      加藤政洋
    • 雑誌名

      立命館大学人文科学研究所紀要

      巻: 第101号 ページ: 1-26

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 米軍統治下における奄美-沖縄間の人口移動2012

    • 著者名/発表者名
      加藤政洋
    • 雑誌名

      立命館地理学

      巻: 第24号 ページ: 1-17

    • 査読あり
  • [学会発表] 米軍統治下の沖縄における都市計画(1)―越来村「ビジネスセンター」構想の表と裏―

    • 著者名/発表者名
      加藤政洋・河角龍典
    • 学会等名
      人文地理学会大会
    • 発表場所
      立命館大学(京都府)
  • [学会発表] 米軍統治下の沖縄における都市計画(2)―越来村「ビジネスセンター」の地形景観の復原―

    • 著者名/発表者名
      河角龍典・加藤政洋
    • 学会等名
      人文地理学会大会
    • 発表場所
      立命館大学(京都府)

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公開日: 2014-07-24  

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