研究課題/領域番号 |
23720419
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
武井 基晃 筑波大学, 人文社会系, 助教 (00566359)
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キーワード | 門中団体の法人化 / 祖先祭祀 / 孔子廟 / 子孫への成果公開 / 現代民俗学 / 沖縄文化 / 琉球史 |
研究概要 |
・現地調査:士族の子孫の有志が運営する那覇の明倫堂・孔子廟の、沖縄戦による戦災後の一時移転先から元の土地(那覇市久米町)への移転過程を調査(2013年6月の「遷座式」、9月の移転後初の「孔子祭(釋奠)」)。このほか門中団体への調査、博物館での資料収集も実施。 ・論文:①今も那覇市内および近郊に居住する士族の子孫の門中成員自身による自らの歴史を知るという文化活動について論文を発表(「系図と子孫―琉球王府士族の家譜の今日における意義―」日本民俗学会『日本民俗学』第275号「小特集 民俗研究は文字文化をどう扱うか」)。/②戦中の接収と戦後の返還を経験した士族系門中の居住地域について論文を発表(「軍用地返還後の土地利用と暮らし―西原飛行場一帯の原状と現状―」『沖縄民俗研究』31号)。 ・シンポジウム:筑波大学人文・文化学群シンポジウムで琉球王府時代末期に、英・仏の外国船に対処した琉球士族の外交担当者について発表(2014年1月12日「琉球王府「通事」の異国への対応―子孫による先祖の履歴の評価―」)。 ・公開講座:①2013年11月16日、國學院大學のオープンカレッジ「法人化した門中の伝統と創造」にて、既存の門中法人が2013年11月までの法人制度(公益法人・一般法人)改正にともなう移行期間を経て、琉球王府時代以来の伝統と人的資源・資産をいかに継続的に活かせるよう組織を整備したかについて講義/②2014年2月22日、筑波大学の公開講座「戦後沖縄の土地と生活」にて士族系門中の土地を事例に接収と返還について講義。 ・資料公開:大正8年に陸地測量部が沖縄の地図作成に当たり当時の県下各区町村で記録した「註記調書」の資料集を前年度の科研費で印刷したが、国土地理院地名情報課の協力を得て、同資料をスキャンした画像を記録したディスクを機関や研究者に提供。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.士族系門中・宗家の現状、2.法人制度の改正に対応する門中団体の対応、3.明倫堂と孔子廟の移転過程についての調査・分析が順調に継続できたとともに、4.琉球時代の家譜資料の分析とそれに対する今日の子孫団体の知的活動を連関させる調査・分析も新たに加えることができました。 研究者として、歴史資料の分析によって得られた成果を発表し、その成果を対象史料の直接の子孫に提供するという、歴史学と現代民俗学の新たな成果還元のあり方を追求できています。 2013年中に、「門中の法人(公益法人、一般法人)の認可・認定」と、「明倫堂と孔子廟の那覇市営公園への移転・落成(および移転後初の孔子祭開催)」がいずれも執行されたので、今年度の調査は当初の予定通り研究計画の折り返しを迎えられます。これらが同年に行われたことで研究対象である門中の法人・団体は大きなターニングポイントを迎え、この転換期について前・後を集中的に調査できたことは、関係者だけでなく、沖縄の歴史と現在にとっても非常に意義深いものです。 最終年度に向けて、引き続き門中関連の法人が行う孔子廟での行事(毎年9月の釋奠祭など)や、法人となった門中が行う祖先祭祀(毎年4月の清明祭など)について現代における門中の全体像を理解する課題を考察していきます。
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今後の研究の推進方策 |
琉球王府時代の家譜に記された、士族の男性の履歴を、グラフ化して表示する手法を進めています。これによって出世の早さ、歴任した役職の数や重要度などを可視化した上で分析することができます。さらに漢文で書かれた記述を、今日の子孫が理解する一助にもなり得ます。 2014年度に、孔子廟の運営団体である久米崇聖会が設立100周年を迎えるのでその記念事業をはじめ、明倫堂と孔子廟を中心とした活動について調査する予定です。昨年11月末日に締め切られた法人(公益法人、一般法人)の認可・認定の結果も調査します。これによって、孔子廟の行事や門中の行事について、現状だけでなく今後の見通しも得られると考えます。このことを、沖縄とその門中だけでなく、歴史的活動を行う諸団体・諸地域に拡大する必要を課題としています。 また、国土地理院地名情報課、沖縄・奄美諸島関連の研究者と連携して、「註記調書」の活用、資料のさらなる収集を進めていく予定です。 あわせて、学会発表や学術雑誌への研究成果の公開を進めます。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画通り使用してきましたが、購入物品(ノートパソコン)が予定より安く済んだため表記の金額を次年度に繰り越すこととなりました。 現地調査のための旅費としての使用が多くを占めます。現地調査は4月の清明祭の時期、9月の釋奠祭および久米崇聖会の100年記念事業に合わせて主に行います。研究代表者以外に、調査・資料収集に協力してくれるポストドクターを派遣する予定です。 旅費以外には、研究資料・史料の購入および複写代金や、調査に用いる撮影・記録機材の調達を予定しています。また、家譜資料の分析データを公開・提供するための印刷費も計上しています。以上の計画をふまえて必要額を請求しました。
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